豊田合成が中国開拓、「セーフティーシステム」販路拡大へ追い風
新工場稼働 供給力を確保
豊田合成が中国市場の開拓に注力している。新興メーカーの台頭で自動車生産が増える中、安全規制の強化により需要が伸びるとみているセーフティーシステム製品で販路拡大を目指す。このほど広東省佛山市でエアバッグなどを手がける新工場の稼働を開始し、自動車の生産台数拡大に応じる供給力を確保した。現地の需要にマッチした開発体制も構築し販路拡大を進める。(名古屋・増田晴香)
佛山市の新工場ではエアバッグやハンドル、歩行者保護製品の「ポップアップフードアクチュエーター」などを生産しており、11月末の開所式を機に本格稼働した。中国のグループ会社、豊田合成(佛山)汽車部品の分工場として設置した。セーフティーシステム製品の生産拠点としては中国で4カ所目。土地面積は約5万4000平方メートル、建屋は約4万3000平方メートル。
豊田合成は2030年度のエアバッグの生産量を22年度比で5割増にする目標を掲げている。中国向け強化もその一環となる。
中国では車両の安全性を強化する機運が高まっており、評価項目の追加など安全規制を厳格化している。豊田合成としては、先行する日本や欧州の安全規制に対応してきた製品力を生かせる。中国や新興国の規制強化はセーフティーシステム製品の販路拡大の追い風になる。
一例として、18年に中国が導入した歩行者保護に関する衝突安全アセスメントに関連し、現地の自動車メーカーによる豊田合成製品の採用が拡大している。このほど第一汽車の国内向け高級ブランド「紅旗」の「EH7」などにポップアップフードアクチュエーターが採用された。
ポップアップフードアクチュエーターは歩行者と衝突した際にフードを瞬時に持ち上げ、フード下の硬い部品との間に空間を確保することで、頭部などに加わる衝撃を緩和する。今回の採用事例では構造の見直しにより、フードの持ち上げ性能を損なわずに部品数を4割削減し低コスト化。さらにコンピューター利用解析(CAE)などを活用し開発ニーズに応えた。
豊田合成は成長戦略の中で中国・インド・北米を重点地域とし、今後は市場のニーズに応える開発体制を構築する計画。苗代光博取締役は「12月から開発の具体的な実行計画にまで落とし込んでいる。スピード感を持って対応したい」と話す。