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豊田合成・住友理工…電気に頼らず現場の課題解決、車部品メーカーで広がる「からくり改善」の効果

豊田合成・住友理工…電気に頼らず現場の課題解決、車部品メーカーで広がる「からくり改善」の効果

豊田合成は部品の空トレー回収作業を改善するため、重りやひもを使ったからくりを製作した

作業負担軽減・脱炭素に貢献

電気エネルギーに頼らず、重力など自然エネルギーや機構などを動力源に現場の課題を解決する「からくり改善」の取り組みが自動車部品メーカーの間で広がっている。物流や搬送工程の生産性向上、作業負担低減に貢献。脱炭素化に向けた省エネルギー推進も追い風となる。各社は年々アイデアのレベルを高め、国内外の拠点に横展開している。(名古屋・増田晴香)

豊田合成は中腰姿勢で行っていた部品の空トレー回収作業を改善するため、重りやひもを使ったからくりを製作した。従来は人が空になったトレーを台車に移し替え、トレー2枚をつかんで上段の作業面に載せていた。からくりではトレーが2枚たまると伝達ひもによりストッパーが解除され、上段に上がる仕組みとし、回収作業を代替できた。

魚釣りの糸の動きに着想を得たという。開発を担当したSS製造部工程改善課の早川健治氏は「トレー1枚の時は反応せず、2枚たまったときにストッパーを解除する方法を考えるのに苦労した」と振り返る。

SS製造部内で実施したからくりコンテストではアイデアなどが評価され、金賞を受賞した。

住友理工は加硫後の製品を台車に載せて在庫置き場に持ち込み、そこから必要数を塗装工程に運んで塗装用パレットに並べる一連の作業を見直した。箱詰めや運搬、仕掛品在庫の多さが課題だった。

改善後は加硫工程の段階で塗装パレットに製品をセットしておき、台車で運搬して直接塗装工程に持ち込む。パレットを積み替える際、作業台や台車のテーブルを支える軸をずらすことで製品を次の工程にスライド移動できるからくりをタイの拠点で開発した。同社グローバル改善推進部の井上秀樹氏は「海外で作られたからくりを国内拠点にも展開するため、さらに使い勝手を向上している」と語る。

三五が製作したパレットチェンジャー。バネを採用し作業負担を軽減した

からくり改善ではランニングコストをかけない仕組みが前提となる。三五(名古屋市熱田区)が製作したパレットチェンジャーは、パレットが台車に載りストッパーを外すと自重でローラーが転がって横方向にスライドする。また排出して空になると台車がバネの力で上昇し、元の位置に戻る。

昇降にエアシリンダーを使用した場合、エネルギー費が必要な上にエア源を確保しなければならず、工事費用もかかるといった課題があった。バネを採用することでコストがかからず、作業負担を軽減した。試作品で効果を検証した上で工場への本格導入を進めている。開発担当者は「高負荷作業がからくりに置き換わることで、女性でも負担なく作業が可能になる」と説明する。

日本自動車部品工業会(部工会)は2050年のカーボンニュートラル温室効果ガス排出量実質ゼロ)を視野に、30年度の二酸化炭素(CO2)排出量について13年度比46%以上の削減を目指している。目標達成に向けて再生可能エネルギーの積極活用などとともに、省エネ対策としてのからくり改善の重要性も増しそうだ。


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日刊工業新聞 2023年11月29日

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