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乾燥処理不要…リチウムイオン電池の電極塗工、日本ゼオンが確立した新工法の効果

乾燥処理不要…リチウムイオン電池の電極塗工、日本ゼオンが確立した新工法の効果

開発材料を用いたドライ成形法で試作した電極

エネ消費・設備面積削減

日本ゼオンはリチウムイオン電池(LiB)の新たな電極製造法を確立し、2026年度をめどにバッテリーメーカーへの導入を目指す。電極材料などを調合した塗液を金属素材に塗布する塗工工程で、乾燥処理が不要となるドライ成形法の独自技術を開発した。エネルギー消費や設備投資負担の削減などのメリットを訴求する。品質評価などを経て市場投入し、LiBの生産ラインへの採用を狙う。

ドライ成形法は活物質や導電助剤、バインダー(接着剤)などの材料で混合物を作製し、金属素材上に直接成形して電極を製造する方法。現在主流のウエット塗工法と比べて設備面積を3割程度削減できるほか、大量のエネルギーを使う乾燥処理などが不要になることから普及への期待が高まっている。

新工法では正極・負極に用いる複数種類の活物質に適用し、成形速度も現行法と同等以上が見込めるという。日本ゼオンは新工法に対応し、材料の分散性や均一性などを実現するバインダーを開発。関連材料の商業化のめどがついたことから、新工法の導入と同時に顧客メーカーへの提案を本格化する。

現行のウエット塗工法による電極製造では有機溶剤を用いる場合があることや、二酸化炭素(CO2)排出削減などの観点から国内外で製法転換を見据えた研究開発が進む。日本ゼオンの新技術ではバインダーなどに有機フッ素化合物(PFAS)を含まない。

同社は26年に米国でLiB用バインダーの生産を計画する。国内外における電池メーカーの工場新設などを商機と捉え、27年度以降にLiBの商業生産ラインへの本格導入を目指す。

日刊工業新聞 2023年12月20日

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