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スズキの新型「スペーシア」、開発責任者が念頭に置いた社会変化

【四輪商品第一部 チーフエンジニア 鈴木猛介氏】

「快適も安全も楽しさも新しく」。新型スペーシアのコンセプトは「わくわく満載!自由に使える安心・快適スペーシア」。ターゲットは子育て中の家族と、子育てが終わって自動車を乗り換える世代だ。頑丈で大容量のコンテナをモチーフにしたデザインを採用した。新型エンジンによる走行性能の向上と新たな安全機能に加え、快適で居心地の良い車内空間にして魅力を進化させた。

スペーシアはハイトワゴンタイプの乗用車で、広い車室空間が特徴だ。デザインは誰もがスペーシアと分かるオリジナリティーを備えている。外装はボディーを上下に分割する力強いキャラクターラインで頑丈さと立体的な造形にした。

親しみやすく優しい印象にする発光ダイオード(LED)ヘッドランプを採用した車体色には、柔らかみがある色を表現した「ミモザイエローパールメタリック」、革製品のような深みがある色を表現した「トーニーブラウンメタリック」を新色として設定した。

2019年に開発を開始した。レジ袋有料化や消費税率の変化によるテイクアウト需要の増加など、社会変化を念頭に置いて設計。全国で既存モデルの使用時の様子を調査して内装の設計に反映した。車室内をどれだけ広くするかが論点。スペースパフォーマンスを高めることにも苦労した。

「マルチユースフラップ」は今までにない提案として取り入れた。休憩中には足を載せる「オットマン」として使える。移動中にはレッグサポートや、荷物が座席から落下しないようにするストッパーモードなど幅広い用途に対応する。

先進安全機能も盛り込んだが、機能に頼るのではなく運転をしやすくすることを考えた。寒冷地で寒さからハンドルを握れない人を見た時、安心・安全な走行を実現するために必要と感じたステアリングヒーターも取り入れた。走行中の視線移動を減らすために、インストルメントパネル(インパネ)のスイッチのレイアウトも変更した。

新しいエンジンを開発したほか、ボディーを軽量化して軽ハイトワゴン車でトップクラスの燃費性能を実現した。家族利用時の会話を想定して静粛性も高めた。今までスペーシアを乗り継いできた人にも「良い」と思っていただけるだろう。

【記者の目/移動時の「仕方ない」を解消】
 ファミリー・子育て層の人気を集め、地位を築いてきたスペーシア。新型車開発では利用シーンの調査と議論を重ね、幅広い場面に対応する利便性を実現。マルチユースフラップなどで従来「仕方ない」とされてきた自動車移動時の課題を解決した。競合が多い軽ワゴン市場で、どのように魅力を発信して拡販するのかに注目したい。(八家宏太)

日刊工業新聞 2023年12月19日

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