原子力機構、研究炉使い即戦力育成
実習スタート、東海村に体制整う
日本原子力研究開発機構は、原子力人材の育成を強化する。同機構が持つ原子炉安全性研究炉(NSRR、茨城県東海村)を使った実習に、2023年度から原子炉の出力を制御する棒を出し入れするといった実践に近いカリキュラムを組み込んだ。数年以内にNSRRのカギとなるパルス運転の実習もできる体制を整える予定。原子炉を使って実習をすることで、現場で活躍できる原子力人材の育成を目指す。(飯田真美子)
初回となる8日の実習では、原子炉に関する講義に加えて実際に学生が制御棒を動かす操作を体験するプログラムを組んだ。こうした実習の準備は以前からしていたが、原子力人材の育成強化を求める声が増えたことで、12月に開始できる体制を急ピッチで整えた。
実習には東京大学専門職大学院の原子力専攻に所属する10人の学生が参加。20―40代の社会人学生が大半で、大学院修了後は企業に戻って原子力関連の知識や技術を持つ人材として活躍が期待される。参加した学生は「操作すると思っていた以上にメーターの挙動が大きく難しかったが、実践できて良かった」と感想を述べた。
NSRRでは出力が上がった時に下げようとする特性を持つ燃料を使っており、制御棒を引き抜くことで数秒だけ高出力の運転を実現できる。そのため原子炉の安全性に関する研究や若手研究者のトレーニングに使われることが多い。NSRRを使った実習は09年から始まっており、11年の東日本大震災の影響で一時休止したものの、復旧後は年に3回程度実施している。
原子力人材の育成が重視される一方、大学が所有する原子炉の老朽化や廃炉決定で学生が実際に操作できる環境は減っている。廃炉が決まった高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の敷地を活用した新しい研究試験炉の建築が決定しているが、完成まで時間がかかりそうだ。
その中で安全性の高いNSRRを使った実習は需要があり、近年は受講を希望する大学が増えている。原子力機構の小林哲也NSRR管理課長は「最近では実習を希望する企業もあり、学生とは違った企業向けのプログラムも作っていきたい」と意気込む。技術を持った人材育成には実際に自分で動かした経験が重要であり、こうした取り組みは現場の即戦力を育てることにつながると期待される。