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坑道掘削時の断層から湧水、減少速度の仕組み解明 原子力機構
日本原子力研究開発機構の石井英一グループリーダーは12日、地下坑道掘削時に断層からの地下水湧水量の減少速度を決めるメカニズムを解明したと発表した。断層内で水が流れる「水みち」のつながり方が3次元(3D)的だと湧水量の減少速度は遅く、一次元的だと速いことが分かった。つながり方は透水試験などから推定できる。トンネル工事や放射性廃棄物の地層処分などにおける適切な湧水対策につながる。
水みちが3D的につながっていると近傍のみから水が供給され、遠方の水圧は低下しない。そのため、坑道近傍で大きな水圧差が保たれ、これが水を動かす駆動力となり、1カ月たっても湧水量はほとんど減らない。
一方、つながり方が一次元的な場合は水圧差が保たれにくく、数日から数週間で半分から1割程度にまで湧水量が減少する。
さらに、事前の透水試験データがない場合も、湧水発生直後の湧水量の減少度合いから減少速度を予測できることが分かった。
幌延深地層研究センター(北海道幌延町)の実際の地下掘削現場での湧水などの観測結果とシミュレーションから明らかにした。
掘削現場では地盤沈下や渇水、工期の遅れなどを防ぐため、湧水量を少なくする必要がある。一般に湧水対策として掘削前にセメント注入などしているが、湧水減少が事前に分かれば不要な対策を省ける。セメント注入には数カ月必要で、費用も1億円程度かかる。
日刊工業新聞 2023年07月13日
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