中国経済の停滞が逆風…低迷する産ロボ受注、今後の見通しは?
2023年の産業用ロボット業界は不透明感が高まる世界経済の影響を強く受け、受注低迷が続いた1年だった。
日本ロボット工業会の四半期統計によると、直近の23年7―9月期の産業用ロボット受注額(会員ベース)は前年同期比31・8%減の1610億円と、大きく落ち込んだ。
日本ロボット工業会の山口賢治会長(ファナック社長)は「世界的なインフレや高金利、地政学的問題もあって設備投資への様子見が広がった」と23年の受注環境を分析する。特に産業用ロボット需要の約半数を占める中国経済の停滞が逆風となった。
ただ、業界内では「中長期的な時間軸で見れば、自動化需要の高まりは揺るぎようがない」(産業用ロボットメーカー幹部)と強気な声も聞かれる。世界的な労働者不足といった構造課題は依然として継続しており、単年での設備投資の波は意に介さない様子だ。
実際、24年以降も安定成長が見込まれる。国際ロボット連盟のスザンヌ・ビーラー事務局長は「24年の産業用ロボット新規設置台数は前年比5%増と成長がやや減速すると予想されるが、全世界で年間60万台の設置台数を達成する見込み」と説明。日本市場は人口動態の変化に伴う自動化需要があらゆる業種で広がり、1ケタ台後半の成長率を予想する。
ロボットメーカー各社も“仕込み”に余念がない。安川電機は約200億円を投じてロボットの新工場を本社(北九州市八幡西区)に建設する。川崎重工業の橋本康彦社長も「生産体制の拡大など成長を実現するための将来構想は全て作っている」と自信を示す。
ファナックは協働ロボット「CRXシリーズ」で食品仕様の機種を投入したほか、不二越も産業用ロボットがベースで、生産性と信頼性を両立した協働ロボット「CMZ05」を9月に発売した。世界経済の回復時期は後ろ倒しになるとの観測もあるが、24年も各社の投資や製品開発の熱は冷めそうにない。