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副業・遠距離勤務…東芝が経営再建へ、人材育成で弾みつけられるか

副業・遠距離勤務…東芝が経営再建へ、人材育成で弾みつけられるか

東芝は迅速な経営再建のためにも人材育成の強化が求められる

東芝が社員それぞれの実情に即した多様な働き方の実現に力を注いでいる。副業制度を導入したほか、遠距離勤務の試行を始めた。留学などで一定期間休職する「キャリア休職」の試行も検討している。家庭環境や職業観が多様化する中、柔軟な働き方で社員の要望に応えるとともに、社外で得た経験を自社の業務に生かしてもらうなどの波及効果も見込む。人材育成の強化で経営再建に弾みをつけられるかも問われる。(編集委員・小川淳)

副業制度は数年間の試行を経て、4月に本格導入した。副業で培た技術や知見を東芝での本業に反映することを狙うほか、本業とは関係の薄いことにも挑戦することで、多様な経験を積んでもらうことを期待している。

本社と主要4子会社の社員約2万人のうち、11月時点では約1%の200人程度が副業をしている。ソフトウエア開発やデザイン制作、カメラマンなどのほか、アナウンサー業に挑戦している人もいるという。副業についての社内アンケートでは96%が好意的な回答を寄せた。

試行を続けている遠距離勤務は、全ての業務を出社せずにテレワークで行うもので、30件程度の実施がある。大半は配偶者の転勤や親の介護が申請の理由だったという。社内アンケートでは100%が「トライアルを継続すべきだ」と回答している。「辞めたいわけではないが、辞めざるを得ない」(人事・総務部)人たちの離職防止に役立っており、人材の定着や社員満足度の向上につながる。今後、本格導入に向けて課題などを抽出していく。

また、5月に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類に移行したことに伴い、試行していた出社とテレワークを組み合わせた「ハイブリッド勤務」を制度として本格導入した。アンケートによると約2割が「基本在宅勤務」で「週1―4回出社」が約5割だった。また、約7割が同制度に好意的な回答をしており、生産性の向上にも役立っているようだ。

このほか、いったん辞めた人材を再び採用する「カムバック採用」を導入したほか、自社に籍を置いたまま留学などをするキャリア休職の試行も検討している。

東芝では2020年以降、人事制度の抜本的な再構築に取り組んで年功序列的な運用を見直し、年齢や勤続年数によらず業務に挑戦する人材を採用・配置するため、社員の意識改革に力を注いでいる。こうした働き方に対する多様な支援もその一環となり、社員が主体的にキャリアを形成することを促すことで個々人の能力を高めたり、ワークライフバランスを整えたりすることで、組織として時代に合わせて成長することを目指している。

東芝は20日に非上場化され、経営の立て直しに挑む。島田太郎社長は「東芝のイノベーティブな技術を世界で再び輝かせたい」と強調しており、そのためには技術を生み出す社員一人ひとりの能力を高める必要がある。制度改革の模索は続く。


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日刊工業新聞 2023年12月12日

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