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開業3カ月で利用者100万人台…公共交通に定着「宇都宮LRT」の課題

開業3カ月で利用者100万人台…公共交通に定着「宇都宮LRT」の課題

土日祝日は需要予測の3倍の人数が利用(宇都宮駅東口)

宇都宮市―栃木県芳賀町を結ぶ次世代型路面電車(LRT)路線「ライトライン」開業から3カ月が経過した。通勤・通学客など平日の利用者数は当初予測と同程度で推移し、地域の公共交通機関として定着しつつある。少子高齢化時代の「ネットワーク型コンパクトシティ(NCC)」実現へ、路線バスなど2次交通機関との連携が今後の課題となる。(宇都宮・辻本亮平)

ライトラインの3カ月目の利用者は平日が1日1万3000人。土日・祝日は同1万1000―1万2000人で、当初予測の4400人を大幅に上回る。11月15日には利用者の累計が100万の大台に到達した。

宇都宮市の佐藤栄一市長は「極めて順調に推移している。仕事や通学など生活の一部として安定して利用されている」と成果を強調。土日・祝日は乗車自体が目的の利用もあるとみられ、「芳賀・宇都宮基幹公共交通検討委員会」で委員長を務める早稲田大学の森本章倫教授は「いずれ落ち着く」と予測する。

宇都宮駅東側はバス網が脆弱(ぜいじゃく)で、自家用車による移動が主。少子高齢化に伴い自力で移動できない人が多く出てくる懸念があった。ライトライン開業にはバスとの乗り継ぎによって高齢者が自力で移動できる街づくりを行う狙いがあるが、バスとLRT路線の乗り継ぎを行った地域内交通利用者の割合は10月時点で4・3%にとどまり、改善が必要だ。ダイヤが異なるため乗り継ぎに待ち時間が発生する場合があるのが現状で、宇都宮市などは利便性向上に向けた施策を検討するとしている。

今後は利用者や沿線の住民に生活の開業後の変化などアンケートを行い、具体的な効果を確認する。需要予測とともに、2030年代の宇都宮駅西側への延伸に向けた検討を加速する。

【宇都宮ライトライン】8月に開業した第三セクターの宇都宮ライトレールが運営するLRT路線。国内の路面電車の開業は75年ぶりで、全路線を新設したLRTは全国初。宇都宮駅東口―芳賀・高根沢工業団地間の14・6キロメートルを約50分で結ぶ。車両はIHIグループの新潟トランシス(新潟県聖籠町)が設計・製造した。
日刊工業新聞 2023年12月01日

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