「1ビット」切り替えに必要なエネルギー100万分の1未満に…コンピューター稼働の低エネ化材料解明
ローザンヌ工科大などが明らかに
ローザンヌ工科大学のヒューゴ・ディル教授らは、電気と磁気に敏感な性質を持つ物質が低エネルギーでコンピューターを稼働するカギになる材料であることを明らかにした。コンピューターが処理する最小単位「1ビット」の切り替えに必要なエネルギーを従来の100万分の1未満にできる可能性がある。高度な電子素材の開発や次世代メモリーといったさまざまな用途に応用できると期待される。
独ヨハネス・ケプラー大学リンツ校とチェコの西ボヘミア大学との共同研究。
レアメタル(希少金属)であるテルルとゲルマニウムの結晶構造に少量のマンガン原子を導入した「マンガンドープテルル化ゲルマニウム(MnドープGeTe)」に注目した。電圧を加えると正極と負極に分かれなくなる性質を持ち、特殊な磁気特性があることで知られている。詳細な特徴を調べると一般的な鉄などとは異なる磁場を持ち、強度がわずかに異なる二つの磁石を重ね合わせたような「フェリ磁石」の特性を示すことが分かった。これによって磁化の方向を柔軟に制御できるようになり、最大で1ビットの切り替えに必要なエネルギーを6ケタ低減させることが可能になる。
電子機器や半導体などの性能向上につながるさまざまな材料が開発されている。特殊な構造や性質を持つ材料は多いが詳細な機構や未知の特性が多いのが現状で、解明に向けた研究が進んでいる。
日刊工業新聞 2023年11月27日