ガラスレンズ生産効率20%向上、冨士ダイスが金型材を開発
冨士ダイスはガラスレンズの生産効率を20%改善する金型材料を開発した。熱による寸法の変化量をガラスと同程度の従来比2倍に引き上げ、プレス成形時に変化量の差で生じるレンズの割れを抑える。産出地が偏在するタングステンやコバルトを使用せず、安定供給できる利点もある。車の自動運転用センサーや監視カメラなどに使われる赤外線透過レンズの需要が増す中、同レンズを安定的に大量生産できるようになる。
冨士ダイスが開発したのはガラス成形用の金型材料「TR05」。2023年内に本格投入し、まずは25年3月期に売上高1億円を目指す。カメラや自動運転向けのセンサーに加え、流体を制御・分析する医療用のマイクロ流路チップの金型に活用できるとみている。
熱による変化量は温度上昇と膨張の割合を示す熱膨張係数を、600度C時に毎9・1メガケルビンとした。超硬合金の従来材料の同4・8から約2倍に高め、ガラスレンズの同10並みを実現した。従来材料はレンズに比べて膨張しにくく、寸法変化のギャップでレンズに割れが生じることがあった。また、レンズを金型から取り出しにくい課題もあった。鏡面性を示す「Ra」は従来品と同程度の6ナノメートル(ナノは10億分の1)を確保した。
熱膨張係数の高い主成分を採用し、添加物の配合比率や製造条件を最適化した。超硬合金に使われるレアメタル(希少金属)は産地が偏在するために調達リスクの問題がある。新しい金型材料の主成分は複数の国に産地があり、調達の課題が少ないとみている。
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日刊工業新聞 2023年11月15日