コロナ禍で需要急増、「ペルチェ素子」が担う重要な役割
タイセーが増産
タイセー(埼玉県秩父市、笠原晃二社長)は、ペルチェ素子とこれを用いた温度制御装置を増産する。コロナ禍で医療機器向けの需要が急増していることに対応。ペルチェ素子の原料となるビスマステルル単結晶の育成炉を増設するなど、素子の製造工程を増強し、生産能力を現行比1・5―2倍に高める。総投資額は約8000万円の見通しで、2022年夏にもすべての増強を終える。
タイセーのペルチェ素子は「スケルトン(熱歪緩和)構造」と呼ぶ特殊な形状をしており、熱膨張の繰り返しによるストレスを逃せるため、信頼性や耐久性に優れる。温度制御も精緻にできるため、主に冷却用途を中心に医療、生命工学の分野で徐々に市場を広げている。素子の原料から温度制御装置のユニットまで一貫生産できるのも強みだ。
ここに来て、新型コロナウイルス感染症のPCR検査用の機器で「温度の上げ下げを増幅する用途で使われているようだ」(中務俊之製造3グループ主務)といった背景もあり、受注が急伸。ビスマステルル単結晶を育成する炉を4台から6台に増設すると同時に、各炉を結晶のサイズごとに専用化し、生産効率を引き上げる。
また単結晶を素子に加工するための切断工程を2倍にするほか、ハンダ付けラインに省人化装置を導入、自動化率を高める。自動機の導入には社内の工機部門を活用し、投資額を抑える。ユーザーから湿度に強いと評価の高い制御装置のユニットも「素子の生産能力が1・5―2倍になれば、ユニットの製造は外注などでも対応できるので同じくらい増やせる」(同)としている。
日刊工業新聞2021年11月8日