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環境低負荷の半導体開発、供給網もグリーン化

半導体再興へー大学の最先端研究 #2
環境低負荷の半導体開発、供給網もグリーン化

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NECやソニーを経て10年前に東京工業大学に着任した若林整教授は「経済安全保障と言われるが、その文脈がなくても半導体は重要だ」と声を大にする。我々が高度な情報化社会の恩恵を受け続ける限り、半導体集積回路産業が担う役割は変わらないからだ。

半導体は集積密度が18―24カ月で倍増する『ムーアの法則』に沿ってこれまで集積化が進んできた。最新のパソコンには1000億個以上のトランジスタが搭載され、「2060年ごろには、さらに現在の100万倍の機能が集積される」と若林教授は見通す。

若林教授は、かつて世界最小の5ナノメートル(ナノは10億分の1)サイズのトランジスタを開発した。だが、微細化は限界に達しつつあり、現在はシリコンに代わる新しい原子層状半導体で基板を薄くし、3次元(3D)に織り込むことで2ナノ以下の微細化を目指す。その先はカーボンナノチューブ半導体やグラフェンによる配線技術も検討する。

若林教授

文部科学省のプロジェクトで進める「集積Green―nix(グリーンニクス)研究・人材育成拠点」構想では、豊橋技術科学大学や広島大学、多くのメーカーとともに環境負荷の低い半導体を開発し、サプライチェーン(供給網)を含めてグリーン化する。同時に、材料やデバイス、回路、システムなどの大規模集積回路(LSI)分野でイノベーションを起こし、10年先の半導体産業をリードする「LSIイノベーター」を大量に輩出していく。


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日刊工業新聞 2023年11月16日

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半導体再興へー大学の最先端研究
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日本の半導体が再興の波に乗り、大学への期待感が強まっている。先端デバイスの研究開発は一時期、大学でも下火となった。だが、半導体分野の教育・研究を通じた人材育成や、最先端技術の開発はこれから大学の大きな使命となる。専門家はどのような未来図を描くのか。注目研究者のテクノロジー展望に迫る。

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