日本精工・NTN・ジェイテクト…軸受3社の業績見通し、産機向け落ち込みで明暗分かれる
軸受メーカー3社の2024年3月期は自動車向けの回復が継続し、為替の円安も収益を押し上げそうだ。しかし、産業機械向けが落ち込み明暗は分かれる見通し。中東情勢の急変で、エネルギー高騰など日本経済のリスクも増している。収益力を改善するには、軸受技術で世界を再びリードする付加価値の創出が求められる。
「産機事業は需要の調整局面が継続している」。日本精工の鈴木啓太取締役代表執行役専務は、足元の産業機械事業の環境をこう捉える。
同社は中国経済低迷の長期化などを見通し、24年3月期連結業績予想で営業利益を7月公表比140億円減の300億円に見直すなど下方修正した。産業機械事業の工作機械や半導体製造装置向け製品で中国市場の需要減などを織り込んだ。しかし鈴木取締役代表執行役専務は、「中期経営計画で掲げた収益性の目標は変えない」とし、電気自動車(EV)シフトが進む中国市場で「技術力の提案でシェアを伸ばせる」と自信を示す。
NTNは主力の自動車向けが23年7―9月期に四半期単位で黒字に転じた。鵜飼英一社長は「増産基調が続き、通年で黒字化を図る」と話す。業績悪化の主因だった自動車事業は採算が改善し、立ち直りをみせている。半面、産業機械向けは世界的に減少。金利高やインフレの影響から機械関連の設備投資が鈍い。原料コストの上昇で円安も大きな追い風にはならない見通し。24年3月期の業績見通しは据え置いた。
ジェイテクトの23年4―9月期の産機・軸受事業は売上収益が前年同期比4・2%増の1809億円だった。神谷和幸最高財務責任者は「中国などで販売が減少したが、日本や欧州、北米で増えた」と説明。事業利益も為替の影響や原価低減効果などで、同7・7%増の76億円となった。これに伴い、24年3月期の業績予想で他の事業も含む売上高と全利益段階を上方修正した。
ウクライナ危機に続き、中東情勢も世界経済の不安定化に拍車をかける。「一番気がかりなのは中東の混乱。エネルギー高騰のリスクがあり、経済に与えるインパクトは読めない」(NTNの鵜飼社長)。立ち向かうには低炭素化を加速する技術や、顧客の生産性を高める製品・サービスなどの先行開発が欠かせない。