日野自は220億円赤字、いすゞは最高業績…業績予想で分かれた明暗
商用車2社の2024年3月期連結業績予想は明暗が分かれた。4期ぶりの当期黒字を見込んでいた日野自動車は一転、220億円の赤字に転落する。台数減や市況悪化に加えエンジン認証不正に関わる顧客補償、集団訴訟の和解金支払いなどが響く。一方、いすゞ自動車は2期連続で売上高と営業・経常・当期の各利益段階で過去最高を見込む。両社とも為替の円安進行がプラスに働くが、タイなど主力市場の停滞で予断を許さない状況が続きそうだ。
23年4―9月期の決算発表に合わせて、日野自、いすゞともに24年3月期の世界販売台数計画を引き下げた。トラック購入時のローン審査の厳格化により需要が減速しているタイや、資源価格低迷が続くインドネシアの市況悪化が主因だ。
いすゞの山北文也企画・財務部門バイスプレジデント(VP)はタイ市場について「25年3月期の後半ごろから回復するのではないか。モデルチェンジしたピックアップトラックなど商品力で販売台数を増やしたい」と対策を急ぐ。
国内市場については半導体不足の改善により生産制約が解消し、23年4―9月期は全需が増えた。ただ、架装メーカーのキャパシティーが生産回復の速度に追い付かず、販売までのリードタイムが長期化しているという。
一方、両社とも国内でトラックや部品などを生産して海外に輸出する比率が高く、為替の円安進行は営業利益の増益要因となる。24年3月期の営業利益を前期実績と比較すると、日野自は70億円、いすゞは30億円、それぞれ為替影響でプラスに寄与する見通しだ。
日野自の小木曽聡社長は「会社が逆風の中、為替で少し助けられている」としながらも「企業の運営上、必ずしも円安を前提に継続してはいけない」と、一過性の要因に頼らず収益を上げることの必要性を語る。
販売台数減や資材高騰の影響を受けながらも、過去最高の業績を見込むいすゞ。山口真宏取締役常務執行役員グループ最高財務責任者(CFO)は背景について「数年にわたり資材費上昇分について顧客の理解を得ながら価格対応したことや、原価低減活動をした結果だ。外部環境の良い部分を上乗せできる」と分析する。
一方の日野自は依然としてエンジン認証不正に起因するマイナス影響から抜け出せない。23年7―9月期に米国の集団訴訟の和解金347億円を特別損失として計上。豪州やカナダでも同様の訴訟を抱えており、今後関連費用が発生する可能性は否めない。24年3月期は本社工場(東京都日野市)の一部土地の売却益約500億円などが加わるが、マイナスを補い切れない状況だ。
販売台数の多い主力海外市場の需要が戻るには時間を要する見通し。日野自の小木曽社長は「台数が伸びない時に事業体質を健全化していくことが大事」と指摘する。“我慢の時”の取り組みが中長期の成長を左右することになりそうだ。(編集委員・錦織承平、大原佑美子が担当しました)