iPSで高純度心筋細胞を作製…米アイ・ピースと慶大発バイオベンチャーが協業深める
米アイ・ピース(カリフォルニア州、田辺剛士最高経営責任者〈CEO〉)とハートシード(東京都新宿区、福田恵一社長=慶応義塾大学医学部名誉教授)は、医療用iPS細胞(人工多能性幹細胞)由来の高純度な心筋細胞を安定的に作製することに成功した。iPS細胞が心筋細胞に分化する過程で分化のバラつきを抑制し、分化誘導を最適化した。心筋細胞の作製を効率化できる成果が得られたことから、両社は心筋再生医療の促進に向け協業を深める。
アイ・ピースが作製した4人の異なるiPS細胞8株を使ってハートシードの心筋分化誘導技術を用いて分化誘導したところ、すべての株で7割以上の高い分化効率を達成した。得られた心筋細胞をハートシードの独自技術で医療応用に適した99%近い純度に高めることに成功した。
iPS細胞は心臓の細胞になりやすい細胞となりにくい細胞があり、事前に予想することが難しいため、再生医療の現場では多くのiPS細胞株を保管しておく必要がある。今回の成果で保管する株を減らせる。
両社は今後、自分由来のiPS細胞を使った再生医療の実現へ協力する。アイ・ピースは心臓以外の病気についても治療法の確立に向けてさまざまな機関と協働する方針だ。
アイ・ピースは山中伸弥京都大学教授の研究室出身である田辺CEOが2015年に設立。ハートシードは慶応義塾大学発バイオベンチャー。
日刊工業新聞 2023年11月01日