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レクサスの次世代EV「LF-ZC」公開、トヨタが“車屋らしい”EVで攻勢に出る

レクサスの次世代EV「LF-ZC」公開、トヨタが“車屋らしい”EVで攻勢に出る

モビリティショーでプレゼンするハンフリーズトヨタ取締役執行役員と「LF-ZC」

トヨタ自動車が電気自動車(EV)を続々と打ち出している。脱炭素に伴うEVシフトが加速し、米テスラや中国の新興メーカーも台頭する中でEVに対するトヨタの一挙手一投足が注目を浴びてきた。トヨタはEVを持ち前の技術力で作り上げたハードウエアと、強化するソフトウエアを組み合わせ社会とつながるモビリティーとして展開する。時代が変わってもわくわくする“車屋らしい”EVで攻勢に出る。(名古屋・川口拓洋)

東京・有明のビッグサイトで開催中の「ジャパンモビリティショー(JMS)2023」では高級車ブランド「レクサス」で2026年に投入予定の次世代EV「LF―ZC」を満を持して発表した。特徴はかつてない形状。電池と電動駆動装置「イーアクスル」、車載エアコンを小型軽量化した。BEVファクトリーの加藤武郎プレジデントは「全高を低く抑えデザインの自由度を広げた」という。

このうち電池では、リチウムイオン電池(LiB)の材料変更や体積効率などを見直した「次世代電池パフォーマンス版」を採用。航続距離は空力性能などと組み合わせ従来比1・7倍の1000キロメートルを実現する。外見だけでなく、室内空間もダッシュボードが低くなり、見晴らしの良い運転が可能になるという。サイモン・ハンフリーズ取締役執行役員は「常識を打ち破るきっかけとなる車」と期待をかける。

35年に新車販売のすべてをEVにするレクサス。LF―ZCのさらに先の時代を見据えるのがJMSで初披露したコンセプトカー「LF―ZL」だ。レクサスの担当者は「26年よりさらに未来を見据え、フラッグシップにふさわしい車」と紹介する。ZCの特徴を引き継ぎながらも前席は爽快な走りを楽しめ、後席は運転手付きの車「ショーファーカー」の乗り心地という。

トヨタブランドでも次々と新EVを投入する。それが、スポーツ多目的車(SUV)タイプのコンセプトモデル「FT―3e」とスポーツタイプの「FT―Se」だ。低重心と広い空間を両立するしながら、ソフトウエアの更新により、運転者の個性にあった多様な楽しみ方を提案する。

「新しい魅力を広げていきたい」と話すのはミッドサイズビークルカンパニーMS製品企画の高橋司チーフエンジニアだ。人気SUV「ランドクルーザー」のEVを開発しており、そのコンセプト車「エスイー」を解説する。日常でもオフロードでも走破性を発揮する。キャンプ場での悪路も問題なく走行できるなど、ランクルならではの安心感を与える。「まだコンセプトだが、声を聞きながら多様なニーズに応える」という。

トヨタは「マルチパスウェイ(全方位戦略)」を掲げ、地域のエネルギー事情などに適した車両を展開している。競争力のあるEVの投入が、同経営戦略をさらに強固にする。

日刊工業新聞 2023年10月31日

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