省施工建材で現場の負担軽減、建材メーカーが新たな工法・製品
建材メーカーが施工現場の負担減に取り組んでいる。吉野石膏(東京都千代田区、須藤永作社長)は、施工品質の差や騒音を発生させずに石こうボードを取り付けられる工法を開発。YKK APはカーポートの施工を補助する製品を相次いで投入した。建材メーカーは品質を担保しながら職人不足に対応するため、製品の改良や治具の開発に取り組む。(田中薫)
吉野石膏、ビス不要ボード固定
日本商工会議所などが中小企業に実施した調査によると、建設業の人手不足と回答した企業の割合は介護・看護業(86・0%)に次ぐ2位(82・3%)だった。職人の高齢化などもあり、施工現場での負担を軽減する取り組みは従来以上に重要性が増している。
吉野石膏はビスやステープルを用いずに石こうボードを取り付ける「スマートJG工法」を開発した。内装工事では電動工具を用いてビスで軽量鉄骨とボードを固定するのが一般的だが、騒音の発生や施工者によって品質に差が生じるといった問題があった。
新工法ではテープ状の接着材「JG02」を軽量鉄骨に貼り、ボードを仮固定した後にニチレイマグネット(大阪府東大阪市)の磁力式工具「スーパーマグチャック」で圧着する。テープ状のため接着材の塗布量にバラつきがなく、施工時に騒音が発生しない。現在は壁面施工に用いているが、天井施工への展開も検討する。
YKK AP、カーポート補助治具
YKK APはカーポートの施工を補助する治具を開発した。近年、台風の激化により、積雪地域で人気の高耐荷重の折板屋根カーポート需要が全国で高まっている。ただ、1枚最大25キログラムある折板の取り付けや、柱を立てるための基礎工事は作業負担が大きい。
そこで同社は2022年に屋根に折板を上げる作業を補助する治具「折板荷上げローラー」を、23年にコンクリートの切断時、粉塵飛散を防止する「ダイヤモンドカッター用集塵カバー」を投入。従来2人で行っていたコンクリートカット作業を1人でできるようにした。治具は同社の製品だけでなく、他社製品にも使える。
プレカットや完成品の出荷など製品改良による省施工化も進んでいるが、一方で完成品は部材に比べ輸送時の積載効率が落ちることが多い。タカラスタンダードやYKK APは施工方法を学べる研修所を設けている。運送・積載効率を高めつつ、現場での施工負担軽減や施工者の育成などをバランス良く取り組む必要がある。