建設機械の電動化、住友建機社長が強調する「知られざる利点」
水素燃料電池モデル登場
建設機械各社の電動化やカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に対応する研究が加速している。コマツは機械質量0・5トンクラスの電動マイクロショベルと3トンクラスの電動ショベルを、10月から国内市場で発売する。コベルコ建機も13トンクラスの水素燃料電池ショベルの稼働評価試験を始めるとともに、2025年中に欧州市場で電動マイクロショベルと小型重機ショベル、国内市場向けに有線(トロリー)電動式クローラークレーンをそれぞれ投入する。(編集委員・嶋田歩)
電動ショベルの研究開発は日立建機や住友建機も含め各社が行っているが、大きさや発売時期が具体的になると同時に販売方法もレンタルだけでなく、実販売も見据え始めた点が新たな動きだ。実販売はレンタルより、初期投資費用が高くなる。長く使い続けることで現場での稼働時間や充電時間がどのくらいか、充電設備が近くに用意できるかなど、さまざまな付帯問題が生じる。電動ショベルも水素燃料電池ショベルもエンジンショベルと違って排ガスを出さず、騒音も小さいため都市部や閉鎖環境の工事に向く。
コマツが発売する電動マイクロショベルは充電インフラ問題を、ホンダと共同開発した着脱式可搬バッテリーで解決した。運転中にパワーが落ちてきた場合は新しいバッテリーに交換すれば良い。充電時間を待たずに作業を継続でき、状況に応じて家庭用の100ボルト電源でも充電できる。価格は341万円(消費税込み)で年間50台の販売を目指す。3トンショベルの価格は1320万円(同)だ。
住友建機も量産型電動ショベルの開発に乗り出している。親会社の住友重機械工業からモーターやキーパーツの技術支援を受け、24年度にも7・5トンクラス以上の量産機を投入する計画だ。数見保暢社長は「電動型はエンジン式と違って初動から力強いパワーが出せる。この利点はユーザーにまだ知られていない」と強調する。
「当社は電動化をショベル開発のハードとしてではなく、全体のソリューションととらえている。ショベルが現場で稼働できるには急速充電設備などのインフラ整備が不可欠」。日立建機の先崎正文社長は指摘する。電動ショベルは大型になるほど掘削パワーが出るが、電池本数や充電時間もその分、多くなる。現場の充電に長時間かかっていたら工事の遅れにつながる。充電設備の数と充電時間をあらかじめ予測し、必要最小限の台数で運用する能力も重要だ。
充電にかかる時間を考えると、リチウムイオン電池(LiB)より水素燃料電池のほうが有利だ。コベルコ建機が電動ショベル開発と並行して水素燃料電池ショベルの試験を始めたのはこれが背景にある。ただ水素燃料電池も現状ではLiB以上に高コストが壁になるほか、大型機だと水素消費量も多くなるため超高圧での運搬と安全性の課題も生じる。各社とも方法の一長一短を認めつつ、時間との戦いの中で最適解を目指して研究が続く。
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