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有機フッ素化合物の規制強化へ、代替素材を探るも多くの懸念点

有機フッ素化合物の規制強化へ、代替素材を探るも多くの懸念点

DICがPFASを使わずに開発したフッ素系と同等性能が見込める界面活性剤

産業界で有機フッ素化合物(PFAS)の規制動向が注視されている。欧州でPFASの製造・使用を一括で規制しようとする動きが進み今後、規制案の審議が本格化する。米国でも規制強化が検討されている。ただPFASは半導体や電気自動車(EV)など多様な産業に不可欠で、代替がきかない用途が多い。日本企業も規制の影響は避けられず、一括規制への懸念や見直しを求める声が上がる。(大川諒介)

今後想定される欧州PFAS規制化の流れ

ある半導体製造装置部品メーカーの幹部は、「原料のフッ素樹脂の在庫を中長期で積み増していく」と方針を明かす。念頭にあるのは、フッ素化学を取り巻く需給バランスの変化だ。国内外で半導体工場の建設が活発化する中、装置部品やインフラ部材、特殊ガスなどに使うフッ素化学品は需要の増加が見込まれる。

ただ多くのフッ素化学品はPFAS規制強化の影響が見込まれ、化学大手の米3Mが2025年末までのPFAS製造撤退を決めるなど供給の先細りが懸念される。「今後、世界的な需要をカバーできるほど供給が増えるとは考えにくい」(同幹部)とし、先回りして対策を打つ。

PFASは1万種類以上といわれる有機フッ素化合物の総称で、その難分解性から“永遠の化学物質”と呼ばれる。1月にドイツやデンマークなど5カ国が、PFASの製造・使用の段階的な廃止を目指す規制案を欧州化学物質庁(ECHA)に提出した。規制案は18カ月の移行期間が設けられ、半導体や冷媒など代替品のない用途は5年または12年の猶予期間が加わる。

PFASのうち、PFOSやPFOAなど一部の化合物は健康リスクなどが指摘され、すでに製造や輸入が禁止されている。しかし、環境中に長く残留し蓄積すること自体への懸念が規制強化を求める動きにつながった。規制案では大半のPFASが対象になり、サプライチェーン(供給網)に大きな混乱が生じると懸念されている。

欧州連合(EU)の化学物質規制である「REACH規則」の対象にPFASが加わる場合、欧州に進出する日本企業は対応が求められる。最終製品を含むEU向け輸出にも適用される可能性があり、「規制強化の議論が国際条約まで広がることも想定される」(政府関係者)。

ECHAは9月までにパブリックコメント(意見公募)を募り、委員会で協議する。欧州議会で法案が採択されれば、27年頃に規制が始まる見込みだ。特定用途のフッ素化合物や部材などで高シェアを握る日本メーカーは複数あり、各社は影響を注視している。

経済産業省は素材産業課長名でコメントを提出。化合物ごとに有害性が異なることなどを挙げたほか、WTO協定との不整合や代替品が実現できない場合に移行期間を延長できる「見直し条項」の必要性などに言及した。

フッ素化学品メーカーで構成する日本フルオロケミカルプロダクト協議会(FCJ)は、「人の健康または環境への『許容できないリスク』に対し措置をとるREACH規則の規制方針に反している」と指摘する。また規制強化を巡り「PFASはすべて有害」という誤った認識が広がることを懸念。有害性が指摘される一部の化合物を「特定PFAS」として区別することを提唱する。

もっとも、こうした規制強化は化学・素材メーカーにとって商機にもなり得るとの見方がある。DICはPFASを使わずにフッ素系と同等性能が見込める界面活性剤を開発。化学各社ではフッ素系と似た特性を持つ炭化水素系樹脂など代替素材の開発が進む。今後、最終製品メーカーが代替素材を探る動きを活発化することも予想され、新しい市場の創出が期待される。

日刊工業新聞 2023年09月19日

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