2.5次元の電子・光デバイス実現へ、高知工科大など、アモルファス金属酸化物薄膜を生成
高知工科大学の山本哲也総合研究所マテリアルズデザインセンター長らは、住友重機械工業、リガク(東京都昭島市)と共同で、室温において厚さ2ナノメートル(ナノは10億分の1)のアモルファス金属酸化物薄膜を生成した。また熱アニールにより厚さ5ナノメートル以上では結晶化や高い電子移動度の実現に成功した。高透過率や高電子移動度などの電気・光学特性の大幅な増大や折り曲げできる新規の機械特性、高熱伝導など熱特性の大幅向上につながると期待される。
新技術は分子線エピタキシャル成膜法(MBE)や原子層堆積法(ALD)に比べ、電気・光学特性設計のためドーピング量などの制御が可能。これにより平面にとらわれない自由な運動や化学結合を形成する電子を包含する材料を生み出す。
高知工大が成膜と電気・光学特性を評価。住友重機械が成膜装置の開発、リガクが超薄膜の構造評価を担当した。
研究グループは住友重機の毎秒厚さ3ナノメートル以上の薄膜を実現できる反応性プラズマ蒸着法を活用。ガラス基板と超薄膜との界面に金属粒が析出しないように膜成長初期から酸素分子ガスを過剰に成膜室に導入するプロセス開発を実施した。
熱アニールは空気中の酸素による膜表面への吸着と膜中への拡散が結晶化工程を阻害しないように真空条件で実施。一連のプロセスを同一装置内で行い生産性向上や再現性を確保する。
山本センター長は「表面が活性な2・5次元薄膜による電子・光デバイスを実現できる」と強調。今後は膜特性が大幅に変化する3ナノメートル以下の結晶質の高電子移動度超薄膜材料を達成可能にするため研究を進めていく。
成果は熊本城ホール(熊本市中央区)などで開かれる「第84回応用物理学会秋季学術講演会」で20日に発表する。また10月4日から幕張メッセ(千葉市美浜区)で始まる「第8回セラミックスジャパン」に出展する。