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鉛フリーで鉛系並み圧電性能、住友化学が薄膜材料を開発

鉛フリーで鉛系並み圧電性能、住友化学が薄膜材料を開発

KNN薄膜ウエハーとその上にパターニングを施したもの(中央)

住友化学は、鉛フリーの圧電薄膜ウエハーで既存の鉛系材料並みの性能を実現した。鉛は欧州特定有害物質規制(RoHS)の対象で、多くの分野で代替が進むが、圧電薄膜材料では鉛系に匹敵する素材がなかった。今後、センサーやアクチュエーター、各種微小電気機械システム(MEMS)デバイスなど用途を探索し、事業化を目指す。

住友化学はカリウムやナトリウム、ニオブからなるKNN薄膜ウエハーに取り組む。開発したKNN薄膜の圧電特性の大きさを示す圧電定数(e31)は、1平方メートル当たり12クーロン。従来の鉛を含むチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)薄膜並みの性能を実現し、実用化レベルに到達した。

KNN薄膜の圧電特性は以前から知られていたものの不十分だった。住友化学は長年研究開発に取り組み、成分組成や薄膜の製造条件を調整し、性能を高めた。寿命はPZT薄膜よりも優位という。

同社はKNN薄膜でPZT薄膜の置き換えを図るため、研究室内の実証設備で薄膜ウエハー以降の微細加工などの後工程やMEMSミラーなどのデバイスも試作し、関連技術を蓄積する。「実際に駆動するデバイスを見せることで、信頼感を高める」(同社担当者)。顧客への技術支援にも生かせる。必要な加工設備はPZT薄膜加工とあまり変わらないとみている。

圧電薄膜材料はインクジェット(IJ)ヘッドなどの従来用途に加え、自動運転向けのライダーや仮想現実/拡張現実(AR/VR)用ヘッドセットなどで市場拡大が期待されている。


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日刊工業新聞 2023年01月24日

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