積水化学が「リノベ」中古住宅事業で攻勢
積水化学工業が中古住宅のストック事業で攻勢をかける。日本は海外と比べて住宅流通に占める中古比率が低く、今後の市場拡大が見込まれている。積水化学は2025年度までの中期経営計画で、他社製住宅の改修やリフォーム商材の販売、中古住宅を買い取り改修後に再販売するなどを注力領域と位置付けている。住宅の改修会社への出資や住宅の買い取りを増やすなど積極投資を行い、「住宅カンパニーの業容拡大のけん引役とする」(神吉利幸取締役専務執行役員住宅カンパニープレジデント)方針だ。(田中薫)
人口や世帯数が減少し新築住宅市場の縮小が見込まれる一方、新築よりも二酸化炭素(CO2)の排出量や廃棄物を削減でき、立地や性能のよい物件を低価格で提供できる中古住宅販売の注目が高まっている。
積水化学の中古買い取り再販事業「Beハイム」は、かつて自社から戸建て住宅を購入した顧客から住宅を買い取り、平均700万円をかけて改修し再度販売する。新築住宅に比べ1000万円ほど購入価格が抑えられる点をアピールし、23年度は22年度と比べ61棟多い150棟を販売し、20億円増となる50億円の売り上げを見込む。
中古住宅は新築に比べて心地よくないという印象や、性能・品質に不安を抱く人が多い。そこで、同社は21年に開設した1992年建築の自社製の住宅をリノベーションした宿泊施設「セキスイファミエスギャラリー松戸」(千葉県松戸市)などを活用し、宿泊体験してもらうことで、リノベーションした中古物件の性能の高さを訴求する。
リノベると協業、集合住宅の知見獲得
また業容拡大のために自社単独ではなく、リノベる(東京都港区)へ出資し、両社で協業する。リノベるは集合住宅の改修を得意とし、中古住宅流通においても強みを持つ。このほどリノベるの物件で積水化学の断熱工法を使用した第1号案件の施工が始まった。
さらに、自社の工法の販売増のほか、Beハイムを従来の戸建て住宅だけでなく集合住宅にまで展開する際のシナジー創出も見込む。リノベるが持つ物件の立地や広さに応じた顧客の分析、人気のある間取り・内装などの知見を参考にし「協業で強く成長していきたい」(積水化学の宮下健執行役員ストック事業統括部長)とする。
中古住宅の買い取り再販事業はパナソニックホームズや大和ハウス工業、ヤマダホームズ(群馬県高崎市)などが取り組み、市場拡大は見込まれるものの競争も激化してきている。積水化学が勝ち残るためには、立地や基礎構造の良い物件の獲得だけでなく、リノベるをはじめとした知見ある企業との協業をどこまで発展させられるかがポイントの一つとなりそうだ。