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腹腔鏡手術の訓練手技をロボットに、東大が制約付き模倣学習開発

東京大学の河原塚健人特任助教と岡田慧教授、稲葉雅幸教授は、腹腔鏡手術の訓練手技をロボットに教える制約付き模倣学習を開発した。熟練者が鉗子(かんし)を操作した軌跡から動作制約を抽出して、学習データを集める際の制約に用いる。腹腔鏡手術のように動作や情報が限られる場面に向く。実験ではデータのブレが小さくなり、ロボット手技の成功率が向上した。

腹腔鏡手術の練習セットで検証(東大提供)

腹腔鏡手術の基礎練習のために行う、リングを棒に移し替える手技を題材にした。棒に刺さっているリングを鉗子で取り、鉗子から鉗子へ持ち替えて別の棒に刺す。2台のロボットアームに手術用鉗子を装着し、人が操作してデータを集める。

鉗子を開閉したり、動きが収束したりすると、手技のフェーズが切り替わったと判定する。一連の手技をフェーズで分けてフェーズごとの動作制約を抽出する。腹腔鏡の操作は画面を見ても奥行き方向の動きがわかりにくい。熟練者の操作の上限と下限を制約とした。

この制約をロボットアームに反映して手技を繰り返すと軌跡のバラつきが減り、質の高い学習用データが集まる。ロボットに実行させると制約付きのデータを学習させた場合は、制約なしのデータに比べて成功率が向上した。リングを取り出し持ち替える動作は成功率が約7割から10割に上がった。

まだ基礎検証の段階だがロボットによる自動手術につながる。また模倣学習を通して熟練者や初心者の動きを人工知能(AI)の潜在空間に表現することになる。熟練者と初心者の差を特定したり、熟練者に近づけたりすることで上達を促すことも可能になる。内閣府・科学技術振興機構(JST)のムーンショット型研究開発事業で実施した。

日刊工業新聞 2023年月9月5日

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