受注2割減った…自動車の電動化時代、中小部品メーカーが探る生き残りの道
自動車業界は電動化が進んでおり、内燃機関の生産は減る傾向にある。「エンジン周りの金型受注が前年比で20%は減った」。愛知県刈谷市に本社を置く生産設備メーカーは表情を曇らせる。自動車メーカー、1次サプライヤーから新型エンジン関連の金型発注が減り、治具など部品加工設備も低調だ。
特に試作用金型の減少が目立つ。自動車メーカーは市場ニーズに素早く対応するため、開発期間を短縮している。中でも試作はCADの精度が向上した結果、大幅に削減されることもある。企業は淘汰(とうた)され、力のあるメーカーに受注が集中する。
入江金型工業所(愛知県岡崎市)の近藤剛志社長は「従業員10人以下の小規模メーカーの廃業が後を絶たない」という。部品メーカーの短納期要請に応えられず、仕事を受注できない同業者を見てきた近藤社長は「このままでは自動車産業の将来が危ぶまれる」と警鐘を鳴らす。
近藤社長は全国の金型メーカーを100社以上訪問し、各社の技術力を細かく見てきた。中小メーカーが強みを生かし弱点を補完できれば、受注につなげられるからだ。現在、金型メーカー15社と連携し、時には近藤社長が聞きつけた仕事をそのまま連携先に紹介することもある。「技術があれば注文が来た時代は過ぎた。しかし技術があれば共存できる」と活路を見いだす。
「難削材加工や新規分野に積極的に取り組めば仕事はある」と話すのは、アイジーエヴァース(同刈谷市)の稲垣徹也社長だ。同社が注力するのが電動車用のモーター部品。成形用治具などを手がけ新たな収益の柱とする。
「減少したといえどトヨタ(自動車)さんは年に数車種ものモデルチェンジがある」(3次メーカー社長)ため、トヨタ系では一定量の仕事はある。一方、年間に1、2車種のモデルチェンジしかないメーカーを得意先とする中小の部品、設備メーカーは事業継続が困難になる。
新車開発のスケジュールが変更されるケースも増えており、これも負担となる。サプライヤーは当初計画に合わせて人とモノを準備するが、延期になると他の受注と納期が重なり、リソースを確保する苦労が増える。力があるメーカーに仕事が集中する理由の一つは、こうした計画変更にも応えられるからだ。
「それでも会社が成長できるなら、頑張るしかない」。5000万円かけて購入したばかりのマシニングセンター(MC)を前に3次メーカーの社長は自らを鼓舞する。
この会社では金曜日の午後に、治具や加工対象物(ワーク)を準備してMCの段取りを済ませる。土日は作業員がいなくてもMCがプログラムに沿ってワークを加工し、週明けに出社すると注文の製品が完成している。「かつての金型作りとは違う」(3次メーカー社長)と、3次、4次メーカーも生き残りをかけ確実に変貌している。(名古屋・星川博樹が担当しました)
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