個人投資家の上場ベンチャーファンド投資を促進、経産省が優遇措置へ
経済産業省は個人投資家による上場ベンチャーファンドへの投資を促進する。投資額の一部を還付するなど優遇措置を検討する。2024年度の税制改正要望に盛り込む。個人投資家からの投資を一段と呼び込み、スタートアップへの資金供給を強化。M&A(合併・買収)や賃上げなどの取り組みを促すとともに、スタートアップや中小企業の成長を通して日本の産業競争力を底上げする。
上場ベンチャーファンドは個人投資家に未公開企業への投資機会を提供している。スタートアップへの投資は機関投資家が中心だが、ベンチャーファンド市場が整備され、投資家層が広がっている。
経産省は未公開のスタートアップへの投資促進を目的とした英国の税制優遇制度「Venture Capital Trust(VCT)」を参考に検討を進める。VCT制度では投資額の30%を所得税から還付されたり、インカムゲイン(利息収入)とキャピタルゲイン(株式売却益)が非課税になったりする。
加えて経産省は、24年度の税制改正要望で、個人投資家がスタートアップなどへ投資する際に優遇措置を講じる「エンジェル税制」やストックオプション税制の拡充も盛り込む方針だ。
一方、中小企業向けでは、経営者が自社株を後継者に贈与・相続する際に税負担を猶予できる事業承継税制の延長を要望する。猶予措置を受けるためには「特例承認計画」を24年3月までに提出する必要がある。要望では特例承認計画の提出期限の延長を求める。
このほか中小M&Aを促す「経営資源集約化税制」のうち、株式取得価額の最大70%を準備金として積み立て損金に計上できる制度の延長も要望する。
賃上げの取り組みも後押しする。赤字企業でも賃上げ税制を活用できるよう、税額控除分を来期以降に使用できる繰り越し控除の創設を求める。
また中堅企業への支援措置の強化や23年度末までになっている適用期限の延長も求める。厳しい事業環境でも事業継続や賃上げに取り組む中小を支える。