JX金属・三菱マテリアル…非鉄各社がリチウム電池リサイクル技術に磨きかける
電気自動車(EV)やモバイル機器などに広く利用されるリチウムイオン電池(LiB)の需要の高まりを見越して、非鉄各社によるLiBリサイクル技術の開発が活発化している。自社で培ったリサイクルの技術力や、他社との協業によってノウハウを蓄積する一方、EVの普及スピードや、中古車が海外に輸出される中での廃LiBの確保も重要になるとみられ、各社とも事業化の時期を見通しにくい現状もある。(狐塚真子)
LiB内にはリチウムやコバルト、ニッケルが用いられるが、これらレアメタル(希少金属)の生産国は特定の地域に偏在する。資源ナショナリズムや地政学リスクの高まりなどから、資源の確保・循環の重要性が増している。LiBリサイクル業界では、欧州電池規則が共通のベンチマークとされ、金属元素ごとにリサイクル収率の達成が求められる。こうした中、非鉄各社はLiBリサイクル技術に磨きをかけている。
JX金属は、JX金属サーキュラーソリューションズ(福井県敦賀市)において、技術開発センター(茨城県日立市)で開発した技術の実証を進める。JX金属の佐藤利秋電池材料・リサイクル事業推進室長は「今のターゲットは廃車載LiB」と言及。「事業化の時期や規模などを検討しつつ、技術検証も進める必要がある」と話す。
三菱マテリアルはエンビプロ・ホールディングス(HD)と連携し、廃LiBからのレアメタル回収に向けて湿式製錬技術を開発。これまでもEVから電池パックを安全に解体する技術や、電池粉からのレアメタル回収技術などの開発を進めてきたが、エンビプロとの連携により取り組みをさらに加速させる。
強みはEスクラップ(都市鉱山)事業を通じて得た世界各国のリサイクル事業者とのつながりだ。「Eスクラップを扱う事業者は、廃LiBの回収・電池粉への処理を手がけることも多い」(山下孝戦略本社戦略・経理財務統括室経営戦略室室長補佐)ため、リサイクル原料の確保に優位性を発揮するとみる。
住友金属鉱山は、EVなどで利用される高ニッケル含有LiBをリサイクル事業のターゲットとする。同社では乾式、湿式製錬を組み合わせた手法を採用。湿式のみと比べ、コスト低減や効率化につながると見込む。
2025年度からの次期中期経営計画期間内に年間1万トンの処理体制の確立を目指すが、事業化の時期を読むのは難しい側面もある。「高ニッケル含有LiBを搭載したEVが廃車になる時期は30年頃とみるが、車の性能も伸びている。ハイブリッド車も含め、中古車は海外への輸出も想定される」(金属事業本部事業室の真野匠技術担当課長)ことから、廃LiBの確保が重要になるとみている。
また使用済みのLiBは自家消費用蓄電システムなどの用途で再利用されることもある。リサイクル技術の確立と同時に、リサイクル原料確保の観点での取り組みも必要になりそうだ。
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