需要伸び悩む「銅電線」、車ワイヤハーネス好転も残る懸念材料
銅電線の需要が伸び悩んでいる。日本電線工業会がまとめた6月の銅電線の推定出荷量は、前年同月比2・9%減の5万3700トン。自動車の生産台数の回復に伴って車向けは2ケタの伸びを示した一方、出荷量の約半数を占める建設・電線販売業向けは小幅な増加にとどまり、電気機械向けは減少した。銅の国内価格指標である銅建値は高値圏で推移するほか、原材料やエネルギーの高騰といった懸念材料は残ったままで、予断を許さない状況が続く。(高島里沙)
ワイヤハーネス(組み電線)をはじめとする自動車向け電線の6月の推定出荷量は、前年同月比14・8%増の8200トン。半導体不足の緩和に伴って自動車の生産台数が回復していることを受け、銅電線需要も好転している。自動車向け需要は車メーカーの生産動向に大きく左右される。2ケタ増ではあるものの、前年同月は半導体不足の影響で自動車は減産となっており、その反動が大きい。
足元では半導体不足の解消が進み、自動車や自動車部品メーカーにおける生産量は増えている。古河電気工業の福永彰宏取締役兼執行役員常務は、4―6月期の状況について「ワイヤハーネスは、前年同期と比べて金額・数量ベースで15―20%程度回復している」と語る。
自動車の生産回復に伴って、電線各社のワイヤハーネスの生産性は改善傾向にあるもよう。7―9月期以降はさらなる自動車増産が見込まれるため、自動車向けの電線は一段と需要の伸びが期待できそうだ。
また、国内需要の半数を占めるビルや住宅などの建設・電販向けは、6月の推定出荷量が前年同月比3・5%増の2万5400トンだった。大型の再開発工事の着工が増えているとはいえ、低調だった前年同月からの反動増の側面が強い。例年、年度末にかけて需要が高まる傾向にあり、下期以降の動きに期待がかかる。
一方、懸念材料もある。電気機械向けの6月の推定出荷量は同3・9%減の1万1400万トンで、銅電線全体の出荷量を押し下げる要因となっている。
また国内相対取引の目安となる銅建値は2023年に入ってからも高騰が続き、過去最高水準にある。電線用被覆材なども高騰しており、電線メーカーには適切な価格転嫁が求められる。
【関連記事】 自動車部品メーカーも注目、「工場改革」のキーマン