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半導体・EVで需要旺盛…23年度「設備投資計画」調査結果の全容

半導体や電気自動車(EV)向けの投資需要が旺盛で、人流拡大に向けた投資再開が期待されるなど、製造業、非製造業ともに設備投資に積極的に動く。日本政策投資銀行がまとめた2023年度の設備投資計画調査で、23年度の設備投資はコロナ禍前の19年度の投資水準を超えて拡大する見通しとなった。設備投資の拡大は中堅企業を含め地方にも波及し、すべての地域で増加が見込まれる。特に自動車や半導体関連のある北海道や北陸、九州などで大幅に増加する計画だ。(編集委員・川瀬治)

半導体・EV向け堅調、幅広い業種で大幅増

政投銀がまとめた23年度の設備投資計画調査によると、半導体やEV向けの需要が堅調で、幅広い業種で設備投資の大幅な増加が見込まれる。製造業では、半導体の製造能力増強が、素材型におけるシリコンウエハーなどの材料を含め拡大しているのが特徴だ。EV向けの投資がけん引し、電池や電磁鋼板などの設備投資が増加する。特に「脱炭素では持続可能な航空燃料(SAF)など新エネルギー製造に向けた投資がみられる」(産業調査部)としている。

非製造業では、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い人流拡大が進む。訪日客の消費や飲食や宿泊などサービス消費の増加が見込まれる。鉄道の安全対策や航空機導入が期待される。都心再開発や物流倉庫新設も続くとみられる。

一方、先行きの事業へのマイナス影響としては、「物価上昇」や「為替の急変動」などが挙げられている。「人手不足」や「感染症拡大」「供給制約」「自然災害」「金利上昇」など、リスクも多様化している。

設備投資計画調査では実績値は、当初の計画値から下振れる傾向にある。22年度の実績値は同10・7%増と、22年時点の計画の同26・8%増と50年ぶりの高い計画値から大きく下方修正された。当初計画を下回った理由について「新型コロナを理由とする割合は約1割で、人手不足による工期遅れや工事費高騰などで見直しが増えた」(産業調査部)という。

調達網整備、海外仕入れ先分散

米国と中国の覇権争いをめぐって、世界経済の分断が懸念される中、グローバルサプライチェーン(供給網)の強化など、経済安全保障の重要性が増している。グローバルサプライチェーン見直しのきっかけとして、23年度の調査では22年度と比べ「新型コロナウイルス感染症」や「ウクライナ危機」の割合は減少したものの、「原材料費の高騰」や「米中対立や各国の自国産業強化政策」が増加している。グローバルサプライチェーンの見直しの内容としては、23年度も22年度と同様、「海外仕入れ調達先の分散、多様化」「製品や部品の標準化・規格化」などが多く挙げられた。

一方、3年後の海外設備投資先として重視する国・地域としては、北米や中国が高く、タイ、ベトナムと続く。米中対立の懸念はあるが、北米に次いで、中国も引き続き重視先とする企業が多い。

23年度の大企業のデジタル化投資は、全産業で同33・8%増の計画。製造業は同32・3%増を見込む。二酸化炭素(CO2)管理などに力を入れる一般機械が同59・3%増を見込む。エネルギーマネジメントなどを進める輸送用機械が同33・1%増の見通し。非製造業は同35・3%増となる見通し。鉄道のMaaS(乗り物のサービス化)アプリケーションへの投資などから運輸が同54・2%増。遠隔保守管理などを進める電力・ガスが同39・3%増の見込み。

IoT(モノのインターネット)やビッグデータ(大量データ)の解析などを含む人工知能(AI)の活用は、生成AIを含め「活用している」「活用を検討」「関心が上昇」とした割合が上昇。18年度調査以降で過去最多となった。

一方、デジタル化の取り組み内容で、ビジネスモデルの変革・再構築であるデジタル変革(DX)を挙げる企業は2割程度だった。「AIの活用や関心は高まっているものの、デジタルの高度化の内容は進捗(しんちょく)がみられなかった」(産業調査部)としている。

中堅含め全国に波及 北海道・北陸4年ぶり増、九州は3年連続増

23年度の地域別設備投資計画(大企業・中堅企業)は全国で前年度実績比20・1%増の大幅増加を見込む。「すべての地域で増加の計画で、北海道や北陸、九州の伸びが特に高い」(地域調査部)としている。製造業は全10地域で増加、全国で同27・0%増と2年連続の増加を見込む。非鉄金属や輸送用機械、電気機械、化学などが寄与した。非製造業も全10地域で増加し、全国で同16・4%増の計画。運輸や電力、不動産、卸売り・小売りなどが伸びている。

北海道は全産業で同45・4%増と、4年ぶりの増加を見込む。製造業は同32・6%増の見通し。製品切り替えに伴い生産能力増強を行う輸送用機械が同81・6%増となったほか、施設の移転や増築を行う食品が同52・5%増と伸びた。

北陸は全産業で同41・1%増と、4年ぶりの増加となった。半導体・自動車関連で工場新設や投資が拡大している。一般機械が同2・0倍増、金属製品が同2・2倍増、電気機械が同48・8%増と、大幅増加となる見通し。

九州は全産業で同61・7%増と、3年連続で増加した。半導体関連を中心に幅広い業種で増える。非鉄金属が同3・8倍増、精密機械が同3・3倍増、電気機械が同2・2倍増と大幅な増加を見込む。

一方、22年度の地域別設備投資実績はコロナ禍の影響で見送った投資の実施などもあり、全国で同10・0%増と、3年ぶりの増加となった。全10地域のうち、北海道や北陸、中国の3地域を除く、7地域で増加した。


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日刊工業新聞 2023年08月04日

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