「元社員」は有力人材、トヨタが離職者を再び採用する新制度
トヨタ自動車は26日、自己都合による離職者を再び採用する制度を始めると明らかにした。同日、同社採用ホームページ内に離職者や社員が参加する専用コミュニティーサイトを立ち上げた。今後、登録者を対象に採用試験などを進める。トヨタは自動車が社会インフラやサービスとつながることで、新たな価値を創出する「モビリティーカンパニー」への変革を掲げる。実現には一層の人材多様化や外部の知見が必要だと判断し、採用方法を広げる。
離職者を再雇用する方法は「アルムナイ(同窓生)採用」と呼ばれる。すでに自己都合退職者や社員が交流するコミュニティーは2022年3月に立ち上げており、現在は約200人が参加しているという。新たに立ち上げたサイトはアプリケーションでも利用でき、トヨタへの在籍が確認され次第、登録される。
サイトでは離職者同士やトヨタ社員との情報交換のほか、トヨタの注力分野や求める人材なども伝える場とする。同制度を利用して採用選考に進んだ場合でも選考プロセスは通常採用と変えない。また異業種に在籍する離職者の知見などを生かした、ビジネス創出の場としても活用を見込む。
トヨタは自社を良く知りながら異業種を経験した元社員を有力な人材だと位置付け、ネットワークを強化したい考え。一方、これまでも離職者を再雇用する事例はあったが、出戻ることに躊躇(ちゅうちょ)する人もいたという。同社は「再雇用でも問題ない、との明確なメッセージを出した。全ての人にオープンにして多様な人に活躍してもらいたい」と話す。
アルムナイ採用は採用時のミスマッチを防ぎ、即戦力になってもらえるとの期待が高いほか、初期の研修が不要で採用コストの抑制が見込めるなどとして導入する企業が増えている。三井住友銀行といった金融業界をはじめ双日、三井化学などが取り入れており、人手不足による人材獲得競争の激化を受けて取り組みはさらに広がりそうだ。
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