ニュースイッチ

オランダASML「ArF液浸露光装置」が好調、新たな輸出規制の影響は?

オランダASML「ArF液浸露光装置」が好調、新たな輸出規制の影響は?

イメージ

ArF液浸露光装置の需要が好調だ。オランダのASMLはこのほど先端半導体の製造に不可欠なEUV露光装置について、足元の需要鈍化などを反映して2023年12月期(今期)の出荷予想を下方修正。一方、ArF液浸などEUV以外の露光装置の今期の売上高見通しを引き上げた。中国向けの活況が背景にある。ただオランダでは9月1日に半導体製造装置の新たな輸出規制が施行され、ArF液浸露光装置の中国輸出も許可申請する必要が生じる。今後、どの程度影響が生じるかは不透明だ。

ASMLの半導体露光装置販売台数

光源に化合物のフッ化アルゴンを用いたArF液浸露光装置は、EUVより一世代前の露光装置。自動車や産業機器など幅広い最終製品に搭載される半導体の製造に用いる。米国が22年10月に先端半導体関連の対中輸出規制を強化して以降、中国の半導体メーカーは20ナノ―40ナノメートル(ナノは10億分の1)世代の非先端半導体の生産に力を入れる姿勢を鮮明にしており、ArF液浸露光装置の需要が増えている。

ASMLは19日の決算発表で、23年12月期の非EUV露光装置の売上高について、前期比30%増としていた従来の見方を同50%増に引き上げた。前期に収益認識できなかった分などが含まれてはいるが、活発な需要による部分も大きい。23年4―6月のArF液浸露光装置の販売台数は39台と、前年の同じ時期(21台)より増加。23年1―3月(25台)の実績も上回った。販売単価も1―3月の1台6400万ユーロ(約100億円)から4―6月は同7000万ユーロに上昇しており、値上げが浸透している。

一方、先端のEUV露光装置は一服感が目立つ。ASMLは23年12月期の出荷台数予想を約60台から約52台に下方修正した。先端半導体の工場新設計画が相次ぐ米国で、人手不足や資材価格の高騰で一部メーカーの工場建設に遅れが出ている。EUV露光装置を設置するための熟練工も不足している模様だ。中期的にはEUV装置は成長が期待できるものの、足元では慎重な見方が広がっている。


【関連記事】 世界の半導体工場で、揺るぎない信頼を集めるクリーン搬送装置
日刊工業新聞 2023年月7月25日

編集部のおすすめ