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活況の半導体装置、日本勢が海外勢より増益率が高い理由

大手4社、売上高2期連続3兆円超

半導体製造装置の活況は2023年3月期も続きそうだ。東京エレクトロンなど国内大手4社の23年3月期連結売上高の合計は約3兆5600億円と、22年3月期を約17%上回る見通し。増収率は前期実績の同約37%より縮小するが、半導体の需要拡大に生産が追いつかない状況で、各社は強気の姿勢を崩していない。

東京エレクトロンは半導体の回路を形成する前工程の製造装置市場について、23年3月期に「前期比2割程度の成長を見込む」(河合利樹社長兼最高経営責任者〈CEO〉)と説明。今期の半導体向け新規装置の売上高を前期比約23%増の1兆8500億円の見通しとした。

22年3月期は最先端から成熟世代にわたる幅広い世代の半導体需要の拡大を受け、半導体ウエハーに感光剤を塗って現像する「コータ・デベロッパー」など主力製品の販売が好調だった。今期も「ロジック半導体は先端世代から成熟世代向けまで幅広く投資を見込んでいる。DRAM向け投資も引き続きプラス成長を期待している」(河合CEO)。

ニコンは半導体露光装置の販売台数(中古を含む)が前期比26台増の61台になる見通し。フッ化アルゴン(ArF)の液浸やドライを中心に新品が伸びる。「自動車や家電などに使われる非先端分野の半導体需要の増加を反映してi線の販売台数も拡大する」(德成旨亮取締役)とみる。

後工程の設備を手がけるディスコも3月末時点の受注残高(出荷済みを除く)が約778億円と、前年同期(約372億円)から2倍以上膨らみ、過去最高を更新した。

アドバンテストは23年3月期の検査装置の売上高を前期比約23%増の3550億円で計画。半導体の高性能化で試験時間が長くなり、メモリーやロジック半導体向け試験装置の需要拡大が続いていることが背景にある。

四半期ベースで増益率を見ると、21年度下期から日本勢と海外勢で異なる傾向がある。東京エレクトロンの22年1―3月期の純利益は前年同期比50%増。SCREENホールディングス(HD)は同2・2倍、ディスコも同54%伸びた。一方、オランダのASMLHDは同48%の減益。最先端品の生産装置の検収が遅れた影響もあるが、部材調達の戦略の違いも影響している。

日本の装置メーカーは国内での調達が中心のため、部材不足のリスクが海外メーカーよりも抑えられ、需要の伸びが利益につながりやすかった。今後は積み上がった受注残高を確実に業績の伸びにつなげられるか、部材調達や人材確保の巧拙がさらに重要になってくると見られる。


日刊工業新聞2022年5月18日

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