2時間→10分に、海洋機構が開発した「鏡面研磨」手法がスゴイ
海洋研究開発機構の清水健二主任研究員は、簡単に平滑な鏡面研磨ができる手法と研磨板を開発した。研磨板を回転式研磨装置に取り付け、その上から研磨フィルムを張って使う。削りくずがたまらない仕組みで試料を傷つけず、従来2時間かかっていた研磨が約10分で仕上がる。半導体や電池などの材料分野の研磨に活用できる。
開発した研磨板は直径20センチメートルで厚さ2ミリメートルの円盤。回転式研磨装置に固定して水を流しながら削る。表面には無数の正六角形をエッチング処理しており、その周囲に厚さ200マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の溝を設けた。他の形だと溝の幅が均等にならず、きれいに研磨できない。この上から研磨フィルムを張ることで溝の部分がたわみ、試料と同フィルムが張り付かずに削りくずがたわんだ部分を通って流れるため試料が傷つかない仕組みになっている。
研磨板は池上精機(横浜市港北区)が製造販売し、価格は1枚約15万円。研磨フィルムは1枚400円程度。
清水主任研究員は岩石試料を二次イオン質量分析装置で測定し、岩石中の水の情報を調べる研究を進めている。同装置で試料を測定するにはビームが当たる部分を鏡面研磨する必要がある。装置の精度は高いため、少しでも歪みがあると正確なデータを取得できない。だが岩石には硬い部分と柔らかい部分があり、長年の技術がないと研磨が難しいという課題があった。
試料を分析するために表面研磨が必要な装置は数多く存在する。開発した研磨板を使うことで、さまざまな試料を短時間できれいに研磨できるようにした。他の研究分野や産業界での活用も期待される。
日刊工業新聞 2023年07月11日