「とうとう来たか」…ニデックがTAKISAWA完全子会社化へ、さらなる買収も
ニデックが旋盤を主力とするTAKISAWAの買収に乗り出す。TAKISAWAを傘下に収めることになれば、ニデックの工作機械事業の売上高は1000億円弱となり、2000億円を超える業界の先頭集団にまた一歩近づく。主力のマシニングセンター(MC)に加え旋盤も手がけることで品ぞろえも豊富となり、総合工作機械メーカーとして存在感も大きく増すことになりそうだ。
「とうとう来たかという印象」。ある工作機械中堅メーカー幹部はニデックが買収を繰り返してきた動きを踏まえ、TAKISAWAへのTOB(株式公開買い付け)をこう受け止める。
TAKISAWAの幹部は以前に「工作機械は会社が多すぎる。どこかが統合集約しないと。やはり少し変わらないといけない」と話しており、今後の展開が注目される。
ニデックの2023年3月期の工作機械事業の売上高は694億円。TAKISAWAの同期の売上高は279億円で、単純合算すると968億円となる。売上高が4000億円を超えるDMG森精機や、同2000億円を超えるオークマ、牧野フライス製作所の背中はまだ遠いが、1000億円規模の事業体制が整う。
ニデックは現在、工作機械事業で歯車工作機、大型の門形5面加工機、マシニングセンター(MC)、横中ぐり盤などを手がける。TAKISAWAの旋盤を加えることで、工作機械の主力機種の品ぞろえがそろう。
そもそもニデックが工作機械業界への参入を決めたのは、高精度なモーターや減速機、電気自動車(EV)駆動用モーター装置「イーアクスル」の製造に欠かせない工作機械の内製化が狙いだった。特に同社が注力するイーアクスル事業は市場が立ち上がり始めたばかりで、大手自動車メーカーや部品メーカー、新興企業などが三つどもえの受注合戦を繰り広げるなど競争環境が厳しい。価格競争力向上につながる製造装置の内製化は同社にとって有効な手段だった。
ただ、21年8月、業績が悪化していた歯車工作機械メーカーの三菱重工工作機械(現ニデックマシンツール)を買収し、早期に高収益企業に変えられたことで同社における工作機械の立ち位置が変わった。
永守重信ニデック会長兼最高経営責任者(CEO)は「工作機械事業は高い収益を上げられる。ニデックの大きな柱の一つになる」とし、既存事業を支える事業ではなく、収益事業として積極的なM&Aにかじを切った。
22年にはMC製造のオーケーケー(現ニデックオーケーケー)、23年に横中ぐり盤世界首位の伊PAMAと立て続けに買収した。
足元ではニデックマシンツールが4月に歯車工作機のホブ盤の中国生産も始めた。これまで顧客の要望に応じて設計を変える高付加価値製品を販売してきたが、量産モデルを初めて開発した。三菱重工工作機械時代はニッチ市場で存在感を発揮する戦略だったが、現地化で価格競争力を高め、普及価格帯で勝負する戦略に改めた。
24年には中国で新工場を立ち上げ、歯車工作機械の他にMCの製造も計画。今後は買収した3社で部品の共通化なども進めて量産効果を高め、MCや横中ぐり盤などでもボリュームゾーンに攻め込む展開が予想される。
ニデックは26年3月期までに工作機械事業で売上高2600億円を目指している。現状では放電加工機や複合加工機はまだ手がけておらず、さらなる買収も見込まれる。
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