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日本郵船が液化CO2輸送で全方位戦略、「早く1号案件につなげたい」

日本郵船が液化CO2輸送で全方位戦略、「早く1号案件につなげたい」

日本郵船のLCO2-EPシステムを搭載した船舶のイメージ

日本郵船は、液化二酸化炭素(CO2)輸送事業を立ち上げる準備を整えた。この1年余りで独自の常温輸送船をはじめ各方式の基本設計承認(AiP)などを取得し、実船への搭載が可能になった。同社は液化CO2輸送船の3方式の全てを手がけ、脱炭素化に伴うCO2の大量輸送需要の取り込みを狙う。(梶原洵子)

脱炭素社会では火力発電やゴミ焼却で発生するCO2は大気中に放出せず、地中にためたり、化学品などに再利用されたりする。これに伴い、CO2を大量輸送する船も必要になるのだ。「進行の早いCO2輸送プロジェクトは2026―28年頃に立ち上がる」(日本郵船)とみる。

3方式は一長一短あるため、日本郵船は全方位戦略をとる。マイナス25―マイナス30度Cで運ぶ「中温中圧」式は商業実績があるものの、船の大型化が難しく、年間数百万トンのCO2を運ぶ大型プロジェクトでの利用は難しい。

マイナス55―マイナス40度Cで運ぶ「低温低圧」式は高い密度で大量のCO2を運べるが、固体・液体・気体が共存する「三重点」の温度・圧力条件に近く、ドライアイス化しやすい。急なドライアイス化は、タンクや配管などに深刻な影響を与える。

そこで日本郵船は、ノルウェーのクヌッツェン・グループとの合弁会社で第3の方式として0―10度Cの常温で運ぶ独自技術「LCO2―EP(常温高圧)」式にも取り組む。一般的な円筒型のタンクよりも細いシリンダー型タンクが特徴だ。同じ体積当たりに入るCO2量は少ないが、船を大型化して大量に運べる。ドライアイス化のリスクは低い。「常温高圧は私たちだけだ」(同)という。

LCO2―EPシステムは22年4月にAiPを、23年6月にノルウェー船級協会から詳細設計承認(GASA)を取得した。AiP取得の段階でも実船への搭載は可能だが、独自技術のため「深く知ってもらうことが必要」(同)とみて、より丁寧に手続きした。陸上にも実証試験施設を持ち、将来は輸送船乗組員の訓練への活用も検討する。

一方、低温低圧式と中温中圧式は三菱造船と組み、22年5月に大型船のAiPを取得。23年6月には応用編として、液化CO2とアンモニアの両方を輸送できる兼用船のAiPを取得した。例えば、火力発電所へ燃料アンモニアを運んだ帰りに、発電所から排出されたCO2を運ぶことなどを想定する。アンモニアを運ぶため、タンクに耐腐食性の鋼材を使うなどの改良を行った。

プロジェクトの輸送量や輸送距離に合わせて、3方式のうち最適な方式を提案し「早く1号案件につなげたい」(同)とする。脱炭素化の流れが、また新たなビジネスを生み出している。

日刊工業新聞 2023年07月12日

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