“溶接ほぼ不可能"のアルミ・ステンレス接合、積層技術で高強度実現
三菱電機は、広島大学の山本元道教授と共同で、アルミニウム合金とステンレス合金という異なる材料について、積層製造(AM)を応用して高強度に接合する新技術を開発した。アルミ合金と鉄系合金の相性は極めて悪く、溶接はほぼ不可能と言われていた。自動車や船舶、航空宇宙分野における軽量化や耐腐食性、冷却性の向上などの用途として応用の可能性を探る。
ワイヤを通電加熱した状態で供給する「ホットワイヤ法」と高出力の半導体レーザー、フラックス塗布法を組み合わせた技術を開発した。ホットワイヤ法はワイヤ自体を通電加熱するため、基材とワイヤに加える熱量をそれぞれ個別に制御でき、「精密な入熱制御と高速造形との両立ができる」(三菱電機先端技術総合研究所の森田大嗣氏)。
今回の実験では、基材に板厚15ミリメートルのステンレス鋼、ワイヤには直径1・2ミリメートルのアルミ合金を用いた。新技術と加工条件の適正化により、母材のステンレス合金の溶け込み深さを抑制することに成功し、さらに溶融アルミ合金のぬれ性(付着しやすさ)を向上させた。
これにより、接合部の強度を低下させて剝離を引き起こす金属間化合物(IMC)の厚さを1・5マイクロメートル(マイクロは100万分の1)まで薄くすることを可能にした。
この技術を用いて多層造形体を作成し、引張試験を実施したところ平均125メガパスカル(メガは100万)の強度が得られ、実用に耐えうる強度を実証した。
三菱電機のワイヤ・レーザー金属3次元(3D)プリンターの将来技術開発の一環として実施した。広範囲に応用が可能な技術として、「3年後くらいに搭載したい」(森田氏)という。
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日刊工業新聞 2023年07月12日