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住宅着工は堅調だが…建設業界は「2024年問題」にどう対応するか

住宅着工は堅調だが…建設業界は「2024年問題」にどう対応するか

積水ハウスの住宅技能工(同社提供)

建設業界は2024年4月に時間外労働の上限規制が適用される。他業種よりも高齢化率が高く、若年層の割合が低い傾向にあり、人手不足の懸念が一層高まっている。この「2024年問題」に対応するべく、各社とも人材の確保・育成の強化を急ぐ。国内の住宅着工需要は堅調だが、これを「うれしい悲鳴」で済ませるのではなく、現場の効率化をいかに進められるかが問われる。(大阪・園尾雅之)

上限規制のイメージ

働き方改革関連法により、時間外労働規制が19年から大企業、20年から中小企業で始まった。ただ建設、物流、医療などの業種では元々、長時間労働を前提としていることから、対応に時間がかかるとし、規制開始が5年間猶予されていた。その猶予期間がいよいよ終了する。

積水ハウスは5月、技能工の新規採用を25年度に現状比3・4倍の133人に増やす計画を打ち出した。その上で親方に当たる30代の「チーフクラフター」の年収を最大で現状比1・8倍の約900万円に引き上げる。これは同年代の工事従事者平均の約2倍という好待遇だ。

同社はグループ会社の技能工が、協力工事店の職方と連携して現場の施工を担う。ただその人数比率を見ると、9割超が協力工事店の職方という。協力工事店は、2024年問題へ十分に対応しきれないところも多く、職方の人手不足が加速するのは避けられない。

その減少分を、積水ハウス側の人材強化で対応しようという考えだ。積水ハウスの大村泰志常務執行役員は「当社のように(2024年問題に対応できる)制度を確立できる会社が採用を強化することが重要だ」と説明する。

タカラスタンダードは、自社のホーロー製システムキッチンやシステムバスの施工士を育成する拠点「トレーニングベース」を大阪府東大阪市と横浜市で展開する。現場で作業するのは代理店や工務店、請負契約を結んだ工事店などの施工士だ。ただホーローの加工には独自ノウハウが必要なため、作業には同社独自の研修を受け認定される必要がある。

ただその認定施工士の6割超が40―50代といわれ、今後、大量の定年退職による人材不足が懸念される。ホーローという同社の強みを生かす意味でも育成強化は喫緊の課題だ。

今後は建設業界でも、時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満、2―6カ月平均で80時間以内に規制される。ただ特例として、災害時の復旧や復興の事業ではその規制は適用されない。

一方、25年の大阪・関西万博に向けて、パビリオンなど建設工事の遅れが指摘される。これに時間外労働の規制が加わると、懸念はさらに強まる。業界では特例に準じて一定程度の規制緩和の認可を期待する声もある。関西経済同友会の角元敬治代表幹事は「規制緩和があり得るのかは分からないが、万博は国家プロジェクトなので『間に合わなかった』というわけにはいかない。(工期や工事費などの)調整能力が問われている」と話す。

とはいえ規制の開始早々に特例頼みでは、働き方改革は骨抜きとなる。単に人材の確保・育成を進めるだけでは不十分だ。業界全体で、非効率な業務を見直し、十分な工期を確保するなどの調整がより重要となる。

日刊工業新聞 2023年月7月11日

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