有機材料で金属状態、東大などが高伝導オリゴマー開発
東京大学の小野塚洸太大学院生と藤野智子助教、森初果教授らは出光興産と共同で、金属状態を示す高導電性のオリゴマー型有機伝導体を開発した。導電性高分子の4量体をモチーフに分子構造を工夫して導電性を向上させた。オリゴマーは高分子に比べて分子の配列状態を精密に設計できる。有機エレクトロニクスデバイスの開発につながる。
導電性高分子のPEDOTをモチーフにして、4量体のオリゴマーを合成した。4量体のうち中央の2量体は酸素を硫黄に置き換えた。さらに両端はかさ高く分子を設計した。すると4量体が中央でねじれて溶媒に溶けやすくなり、安定性が増した。
この4量体を酸化するとねじれが直り、平らな分子として積層する。積層の際に両端のかさ高さが干渉し、ずれながら積み重なる。すると隙間ができ、そこに少量の陰イオンが残る。これが高伝導性につながっていた。伝導性は1センチメートル当たり36ジーメンス。
オリゴマーは結晶構造を制御でき、物性を調整しやすい。レアメタルなどを含まない有機伝導材料になる。
日刊工業新聞 2023年07月05日