ゴミ焼却場「省人化」、ICT・ロボット活用に本腰
ゴミ焼却施設の運転員不足に対応しようと、各プラントメーカーが情報通信技術(ICT)やロボットの活用に本腰を入れている。日立造船は本社から約30施設を遠隔監視して現地の運転員をサポート。タクマは人工知能(AI)を用いて焼却炉の異常を予測するシステムを2施設に導入した。点検作業にロボットを活用する動きも広がっている。(大阪・大川藍)
日立造船は2018年、本社内に先端情報技術センター「A.I/TEC」を開設。自社が運転管理する施設の状況をリアルタイムに把握し、現地へ適切な助言を行う遠隔サポートを実施する。
「現地に派遣するプロの数を減らし、地元の運転員を育てる」(環境事業本部の佐藤英夫エンジニアリングビジネスユニット長)取り組みとして利用が広がっている。同サービスの利用で、運転員の人数を従来の3分の1以下に減らせた施設もあるという。
タクマは炎の立ち上がり方を画像解析し、異常を予測するAI燃焼制御システムを開発した。ゴミ性状の急激な変化で燃焼が不安定にならないよう、AIが燃焼状態の予測や自動介入を行うもので、現地の手動操作を99%削減する。20年にオープンした遠隔監視・運転支援拠点「Solution Lab」からの遠隔操作と合わせ、現地の運転員を2人にまで減らすことができる。
同拠点では遠隔支援のほかに、運転シミュレーターを用いた人材育成も行う。「自動化するだけでなく、プラントの仕組みや基本的操作を運転員が把握することが重要」(タクマ広報)と見据える。
ロボット活用の動きも活発だ。JFEエンジニアリング(東京都千代田区)は四足歩行ロボットと第5世代通信(5G)を組み合わせ、プラントを点検する実証を23年度内に行う。保守・点検作業を代替し、人員を減らすのが目的だ。
日立造船も同様の点検ロボット活用を見据え、京都市内のゴミ焼却施設でロボットを活用した見学者案内を進める。
熟練運転員の数が減る一方、国内のゴミ焼却施設は集約が進まない。今後は「少ない人数でどれだけ効率よく管理できるか」(日立造船の佐藤ユニット長)が、プラント建設の最重要課題となりそうだ。