クボタが廃棄物処理業に初出資、資源循環事業拡大なるか
クボタが資源循環事業に目を向けている。「食料・水・環境」への貢献を掲げ、2021年に策定した30年までの長期ビジョンで新たなソリューションへの取り組みとして目指すのが廃棄物の循環促進だ。主力の農業機械などに比べると小粒だが、同事業はESG(環境・社会・企業統治)経営を具現化する領域。廃棄物処理業への初出資を通じて事業拡大の可能性を探る。(編集委員・林武志)
クボタは中部電力とともに、廃棄物処理などを手がける市川環境ホールディングス(HD、千葉県市川市)に出資した。環境事業部長を務めるクボタの品部和宏常務執行役員は「将来は廃プラスチックなどを原料にし、製品に活用していく展開も見通さなければならない。ESG投資をきちんとやっている意味合いもある」と出資の狙いを説明する。
農機が注目されがちだが、クボタはメタン発酵施設、溶融炉なども手がける。ただ長期ビジョンで資源循環事業の実現を目指す上で「リサイクルの経験もノウハウもない中でどうコミットするか。なかなか難しい」と吉川正人副社長は認識。そこでリサイクル事業の実績豊富な市川環境HDへの出資を決めた。クボタの「オープンに事業展開できるパートナーと一緒にやりたい」(吉川副社長)姿勢も活路となった。
ゴミ焼却発電施設などは日立造船やJFEエンジニアリング(東京都千代田区)が官需向けで強い領域でもある。品部常務執行役員は「(産業廃棄物処理業者など向けの)民需では戦える」と強調する。メタン発酵施設は00年以降、民間向けを中心に100カ所以上の納入実績を持ち、87年に初完工した溶融炉も独自技術を有する。
クボタの20年12月期における水・環境部門の売上高は前期比4・3%減の3158億円。全社の17・0%でそのうち1000億円強が環境関連とみられる。21年12月期連結売上高で2兆円超を見通すクボタにとってはニッチ領域だが、環境関連は避けて通れない。
22年1月1日付で木股昌俊会長、北尾裕一社長とともに代表権を持つ吉川副社長は「ビジネスとしてのパフォーマンスを上げるには“全体のループ”を構築する必要がある。ピースとなる機械は持つが、これまで入り口と出口がなかった。我々の機械がどう機能するかブラッシュアップできる」と話す。出資を通じて廃棄物の収集・運搬(入り口)と再資源・エネルギー化(出口)のノウハウを得るクボタ。資源循環事業を成長させる足場にできる意義は大きいとみる。