スマホに話しかけて病気を予防するアプリ、保険会社が対応急ぐ
保険業界が音声で認知機能をチェックできる技術に注目している。三井住友海上あいおい生命保険(MSA生命)は、東京大学と共同で被検者が数字を読む声から軽度認知障害(MCI)のリスクを判定するサービスを開発した。東京海上日動火災保険やSOMPOホールディングスなどは、NTTコミュニケーションズが実施中の音声通話で認知機能を測定する無償トライアルに協力する。音声を活用した認知機能の把握は、手軽に行える病気予防策として効果が高いとみて、各社対応を急ぐ。(大城麻木乃)
MSA生命は、声の調子でMCIリスクを判定するスマートフォンのアプリを開発した。判定は簡単で、最初はアプリに表示された通常の2ケタの数字を読み上げ、2回目は簡単な引き算をして、その答えだけを読む。独自のアルゴリズムと分析モデルに基づき、「正常」や「要注意」などとリスクを可視化する。29日に開設したヘルスケアの新しいウェブサイトの無償の目玉サービスとして訴求する。
東京海上日動などはNTTコミュニケーションズが実施中の人工知能(AI)が認知機能の状態を測定するサービス「脳の健康チェックフリーダイヤル」にパートナー企業として参加する。同サービスはフリーダイヤルに電話をかけ、その日の日付と年齢を答えると、認知機能は正常か否かを判定する。
2022年9月にサービスをはじめ、3月までに約45万回の利用があった。利用者の約10%に認知機能低下の恐れがあり、90代以降では約54%、80代では約16%に認知機能低下の恐れがあった。24年3月まで無償トライアル期間で、損保各社はこの間に自社の新サービスへの展開を検討する。
日本生命保険は、日本テクトシステムズ(東京都渋谷区)が開発した音声でAIが認知機能をチェックするスマートフォンアプリを認知症保険の契約者向けに提供する。他社との差別化の一環として売り込む。
保険各社は病気になった際の経済的な保障にとどまらず、病気の早期発見や予防に近年、力を入れている。病院まで足を運ぶのは手間がかかるが、音声などを活用して自宅で簡単に病気のリスクを把握できるサービスは顧客の負担が少なく、利用頻度が高まるとみて関心を寄せている。