「月保険」で攻勢…損保大手が「宇宙」に熱いまなざしのワケ

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東京海上日動は月面探査ミッションを保険対象とする「月保険」を開発した

大手損害保険会社が「宇宙」に熱いまなざしを向けている。東京海上日動火災保険は4月から「宇宙プロジェクト」を始動。三井住友海上火災保険も「月保険」の組成へ動いている。宇宙開発は国家主導から官民の連携が急速に進展。世界の宇宙ビジネスの市場規模は2040年代に100兆円を超えることが確実視されている。損保各社は保険の開発やリスクコンサルティングなどを通じ、宇宙産業の発展に寄与する構えだ。(増重直樹)

探査車費用など補償

東京海上日動火災保険は4月1日に「宇宙プロジェクト」を始動した。民間人だけの宇宙旅行や宇宙デブリの深刻化など宇宙空間をめぐる環境変化を踏まえ、社内横断のチームが中心となり宇宙特有のリスクを切り口とする新たな保険商品やソリューションの開発を進める。同社は「宇宙産業の裾野が拡大する中、宇宙空間の利用拡大に伴う社会課題やリスクに対応する商品・サービス提供によって宇宙マーケットの成長発展に貢献したい」と意気込む。

同21日には国際宇宙保険市場の主要プレーヤーである英Beazley PLC(ビーズリー)と月面探査を支援する「月保険」を共同開発したことを公表。宇宙産業の中でも月面探査は成長市場と期待される分野で大企業からベンチャーまで幅広くビジネスチャンスを見いだしている。

東京海上日動とビーズリーが開発した月保険はローバー(探査車)による月面探査ミッションを保険対象とする。オーダーメードで設計するため一概には言えないが、故障や通信トラブルで予定していたミッションを達成できない場合に、月面までの輸送費用や製造費用などを補償する。22年に民間として初の月面探査を目指す宇宙開発ベンチャー、ダイモン(東京都大田区)の月面探査ミッションに月保険を提供することを決めている。

月面探査は無限の可能性を秘める一方で、潜在的リスクは未知数だ。「民間企業が月面探査という未知のリスクと対峙(たいじ)するミッションに、宇宙保険のノウハウを活用した月面探査専用の保険提供で新たな挑戦を支援したい」(東京海上日動)としている。

打ち上げから着陸まで

三井住友海上火災保険も未知なる領域への挑戦を最前線で支え「宇宙ビジネス」の進化と創造に貢献している。宇宙ベンチャーのispace(アイスペース、同中央区)が22年後半に予定するランダー(月着陸船)の打ち上げミッションに関する月保険の組成で合意。打ち上げから月面着陸するまでに発生する損害を切れ目なく補償する。

アイスペースは24年に予定するミッション2では、月面着陸とローバーでの月面探査を目指している。組成する月保険では従来の宇宙保険の補償範囲を超えた、月軌道から月面着陸、月面走行までより進んだ領域をカバーする見込み。同社が掲げる40年代に1000人が月で暮らし、年間1万人が月旅行する世界の実現を目指す構想を補完する。

三井住友海上は打ち上げから月面着陸までに発生する損害を切れ目なく補償する(アイスペース提供)

アイスペースの袴田武史最高経営責任者(CEO)は「どんな事業でもリスクを低減する仕組みが必要だが、月面事業にはまだその仕組みがない。打ち上げから着陸までの包括的な保険の実現はシスルナ経済圏に向けた新たな一歩になる」とのコメントを発表。三井住友海上企業営業第五部・航空旅行宇宙課の林洋史課長も「月への着陸という民間企業初となる挑戦を保険で支援し、月面ビジネスの今後の発展を後押しする」と熱を込める。

衛星データ解析・活用

損害保険ジャパンはSynspective(シンスペクティブ、同江東区)と資本業務提携を結んだ。同社は天候や昼夜を問わず地表データを取得可能な小型合成開口レーダー(SAR)衛星の開発に加え、衛星データの解析を含むソリューションサービスを一気通貫で提供できる。

損保ジャパンは広域水災時にSAR衛星データを活用した保険金支払いの高度化などにつなげる構え。宇宙のリスクに関する保険引き受けノウハウの向上なども進める。シンスペクティブが同社の宇宙戦略における核になると期待を寄せる。

損保会社の主力商品は“時代を映す鏡”と表現される。月保険をはじめとする宇宙空間でのリスクを補償する保険が当たり前となる未来の到来も近いかもしれない。

日刊工業新聞2022年4月29日

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