発光デバイス高効率化へ、九州大学がエネ移動効率約100%の希土類錯体薄膜を開発
九州大学の宮崎栞大学院生と宮田潔志准教授、恩田健教授らは、エネルギー移動効率が約100%の希土類金属錯体薄膜を開発した。1兆分の1秒の時間分解能で発光過程を調べてメカニズムを特定した。錯体の周囲の分子から錯体へとエネルギーが伝達される。発光デバイスの高効率化につながる。
三価のユーロピウム錯体の薄膜中での発光機構を解析した。この錯体はトリアジン誘導体と混ぜて薄膜を作ると、錯体単体の400倍近い発光強度が得られた。このメカニズムを1兆分の1秒の分解能で逐次解析した。
まず錯体を囲むトリアジン誘導体が光を吸収して別のトリアジン誘導体にエネルギーを受け渡す。これがユーロピウムを囲む錯体配位子を経由してユーロピウムへと伝達される。このエネルギー移動効率はそれぞれ約100%だった。
最終的にエネルギーを光に変えるユーロピウムの発光効率は87%と高い。各過程の効率が求まり、材料の設計指針が得られた。発光素子とするためには固体中で光らせる必要があるが、有機分子の制御が難しかった。
日刊工業新聞 2023年06月21日