日本、ステンレス紛争で勝訴…WTOが中国に是正勧告
経済産業省は、日本製ステンレス製品に対する中国のアンチダンピング(不当廉売)措置をめぐる紛争について、世界貿易機関(WTO)の紛争処理小委員会(パネル)が日本の主張を認め、中国に対し是正を勧告したことを公表した。発表から60日以内に開催されるWTO紛争解決機関で採択される見込み。採択されると中国は勧告に沿って是正する義務を負う。日本は中国に措置の撤廃を求めていく。
中国は日本、韓国、インドネシア、欧州連合(EU)から輸入されるステンレス製品のダンピングによって国内産業が損害を受けていると主張し、2019年からアンチダンピング税を課した。21年、日本の要請でWTOにパネルが設置され審理が行われていた。日本は中国の認定や調査手続きに瑕疵(かし)があり、GATT(関税および貿易に関する一般協定)やアンチダンピング協定に違反するとして措置の撤廃を求めていた。
19日にパネルが公表した最終報告書では、中国による損害・因果関係の認定、手続きの透明性に問題があり、アンチダンピング協定に整合しないとし、中国に対し是正を勧告した。
アンチダンピング税の対象製品はステンレススラブ、ステンレス熱延コイル、ステンレス熱延鋼板。スラブは半製品で、熱延コイルは自動車部品や家電に、熱延鋼板は船舶、橋梁、産業用機械に使われる。それぞれ形状や用途、顧客、価格帯が異なるが、「『中国は製品の違いを無視して合算し、算出した平均価格を基に、国内が影響を受けているという無意味な認定をしている』と日本は主張してきた」(経産省)。
パネルの最終報告書は、ダンピングにより国内価格が押し下げられたとする中国の認定が、客観的な分析に基づくものではないとして日本の主張を認めた。原料となるニッケル価格上昇を十分考慮していないといった日本の主張も認めた。
中国によるアンチダンピング税は日本冶金工業、日鉄ステンレス、JFEスチール、大同特殊鋼が影響を受けており、経産省では、国内業界の売り上げ減が年約56億円になると推定している。経産省は、今後WTOのルールに従って適切に解決するよう、手続きを進めるとしている。