「人手不足倒産」2.4倍…人件費上昇が収益悪化を直撃
人手不足の影響が拡大している。東京商工リサーチ(TSR)の調査によると、1―5月の「人手不足倒産」は前年同期比2・4倍の56件だった。同期の件数が50件を超えるのは、2020年以来3年ぶり。コロナ禍から経済活動が再開して賃上げ機運が高まる一方で、賃上げに踏み切れない資金余力が乏しい中小企業では、人手不足の問題が深刻化している。
人手不足関連倒産の理由は「求人難」が同57・1%増の22件で最も多く、次いで「人件費高騰」が21件(前年同期は0件)、「従業員退職」が同44・4%増の13件だった。
産業別では10産業のうち6産業で前年同期を上回った。最多は「運輸業」「サービス業他」で15件、次いで「建設業」で12件、「製造業」で6件となった。運輸業は同5倍と大きく伸びた。
TSRは「人手不足は受注機会の喪失につながり、業績回復が遅れる負のスパイラルを引き起こすが、人件費の上昇が収益悪化を直撃する構図が鮮明になってきている」と指摘する。
日刊工業新聞 2023年06月16日