ニュースイッチ

リース9社の通期予想、6社が当期最高益も「ゼロゼロ融資」の影響懸念

リース業界がコロナ禍からの回復を鮮明にしている。2024年3月期の当期利益は、9社のうち8社が増益を予想し、そのうち6社が過去最高を見込む。航空機関連事業が回復し、収益をけん引しそうだ。ただ、コロナ禍で実質無利子・無担保で融資した「ゼロゼロ融資」の返済が本格化しており、事業環境への影響は今後の懸念材料の一つだ。信用費用の増加が見込まれるだけに、各社は取引先の財務状況を注視している。

リース9社

「航空機事業がかなり活発になっており、積極的に取り組みたい」。オリックスの矢野人磨呂執行役は、コロナ禍による旅客需要の蒸発で低迷した同事業の見通しをこう話す。「新型航空機の入れ替えがある。国内投資家からの引き合いも多い」と強調。24年3月期は、同事業で前期比61・2%増の300億円の利益を見込む。当期利益は過去最高となる見通しだ。

三井住友ファイナンス&リース(SMFL)は前期に航空機リース事業で計上したロシア航空会社向け機材の特別損失595億円が重荷になったが、事業が好転するとみる。既に欧米では航空機の旅客需要がコロナ禍前の9割程度に回復し、今後はアジアでも本格回復する見込み。オペレーティングリースや自動車レンタルなども堅調な推移するとみる。

三菱HCキャピタル、東京センチュリー、芙蓉総合リース、JA三井リース、NECキャピタルソリューションの5社は24年3月期の当期利益が過去最高となる見通し。三菱HCキャピタルは「航空事業の伸長などで成長する」(佐藤晴彦常務執行役員)とした一方、脱炭素・デジタル関連事業拡大に向け、事業構成を変革する投資や既存事業領域を再構築する費用計上で増益幅は限定的とした。

東京センチュリーは前期に計上したロシア航空会社向けの特別損失748億円が剥落し、V字回復を予想。国内リース事業も「NTT・TCリースの業績伸長に加え、パートナーとの協業ビジネスが拡大する」(馬場高一社長)。

芙蓉総合リースは「コロナ禍に起因した航空機リース料の回収遅延はほぼ解消した」(織田寛明社長)。北米の航空会社を中心に受注が拡大しており、「機動的な機体売却を行う回転型ビジネスへの転換により利益成長を図る」(同)。

今後のリスク要因は、今夏に本格化するゼロゼロ融資の返済本格化。企業倒産件数が増加することで、与信費用の増加が見込まれている。足元では企業倒産件数が12カ月以上連続で増加しているだけに、NECキャピタルソリューションの菅沼正明社長は「これまで以上に注意が必要になる」と指摘する。リコーリースの中村徳晴社長も「調査会社と同じように企業倒産の緩やかな増加を見込んでいる」とした上で「信用コスト(の増加)は見ざるを得ない。抜かりなく(信用状況の)急激な悪化に備える」と警戒を強める。


【関連記事】 航空機リースのからくり
【関連記事】 三井住友FGの知られざる稼ぎ頭
日刊工業新聞 2023年月5月23日

編集部のおすすめ