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月経に伴う体調不良での労働損失、年4911億円…女性の健康、企業がサポート

月経に伴う体調不良での労働損失、年4911億円…女性の健康、企業がサポート

オンライン診療イメージ。通院の時間が確保しにくい社員もオンライン診療は利用しやすい(クリニックフォア提供)

健康経営への関心が高まる中、女性特有の健康課題に取り組む企業が出てきた。経済産業省によると、月経に伴う体調不良などによる労働損失は年間4911億円にも及ぶという。女性の社会進出が進み、こうした損失を減らすことは企業にとっても避けられなくなってきている。企業が主体的に取り組むことで男性社員の理解も深まり、女性にとってより働きやすい環境が実現する。(安川結野)

医療法人社団エムズ(東京都港区、村丘寛和院長)が運営するクリニックフォアは、企業向けの福利厚生サービスとしてオンライン診療を提供する。社員は婦人科系や花粉症、禁煙治療などから利用する診療科を選択する。診療にかかる費用を企業が一定額負担することで社員の利用を促進し、社員の健康管理や生活の質(QOL)向上につながる。

コジマは6―7月にも、女性社員向けにクリニックフォアの低用量ピル処方サービス利用者の募集を開始する。一般的に低用量ピルの処方には毎月約4000円かかるが、コジマが一部を負担することで社員は毎月2300円で購入できる。新入社員の研修で取り組みを周知し、より多くの社員に自分の健康に関心を持ってもらうなど、健康経営の取り組みを加速する。

同社は2022年6―12月まで同サービスを試験的に行い、23年度の本格導入を決めた。導入の背景について、コジマの大野幸恵執行役員は「月経に伴う痛みや不調をがまんするのが普通と考えている女性も多く、また婦人科は通院のハードルも高い。企業として女性社員の体調を整える対策が必要と考えた」と説明する。

実際、コジマが毎年実施しているストレスチェックで、心身の健康上の問題が理由で生じる労働損失「プレゼンティーズムロス」を調査すると、女性社員が上げた要因の38%が月経だったという。そのため、男性社員に対しても女性の健康への理解を深めるセミナーを開催するなど、月経による不調を伝えやすい環境づくりに取り組んできた。

人手不足解消のためにも、女性に能力を発揮し、長く働いてもらいたいと考える企業は多い。長期的な就労や生産性向上といった効果を期待し、女性の健康に焦点を当てた取り組みは今後も増えていくだろう。

日刊工業新聞 2023年05月31日

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