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研究の自由とセキュリティー両立、G7科技相会合で共通理解醸成なるか

先進7カ国(G7)科学技術相会合が12―14日の3日間、仙台市で開かれる。最大の焦点は研究の自由と研究セキュリティーの両立だ。ロシアによるウクライナ侵攻で科学技術に国境が引かれる事態となった。2022年の同会合ではG7共通の価値観や原則を確認し合った。この運用にあたり具体案がまとまるか注目されていた。23年会合はルール策定ではなく、好事例を共有して各国の制度をすり合わせ、共通理解を醸成する方針だ。日本のリーダーシップが問われることになる。

内閣府の高市早苗科学技術担当相は「科学技術は経済や安全保障と密接に関わる重要分野。G7各国との協力関係を深める貴重な機会になる」とG7科技相会合を絶好の機会と捉える。今回の会合では「信頼に基づく、オープンで発展性のある研究エコシステムの実現」を主題に三つのテーマについて議論する。一つ目がオープンサイエンスで、二つ目が研究セキュリティーと研究インテグリティー(健全性・公正性)の保護だ。悪意のある者が科学知識や技術を不正に使用すると、社会の安全保障にも悪影響を及ぼしかねない。

この研究の保護とオープン化の両立が従来、難しかった。22年は価値観や原則を列挙し例証していくことを決めた。ただ国によって運用に幅がある。内閣府の有賀理参事官は「我々が見ている限りでも、国によって進め方が異なる」と説明する。今回の会合ではルール策定よりも各国のベストプラクティス(最適解)を共有し、各国の制度を相互理解した上での調和を目指す。

論文や研究データのオープン化も各国間で調整が続いている。米国は22年8月に論文とデータの即時オープン化の方針を打ち出した。日本もこれに続く方針だが、有賀参事官は今回の会合の成果文書では「こうあるべきという内容は盛り込まれないだろう」とする。

三つ目のテーマは、気候変動などの地球規模課題の解決への国際協力だ。日本からは北極海域の観測研究を提案している。文部科学省と海洋研究開発機構が建造を進める北極域研究船に国際共同研究を引き込むためのものだ。建造費は335億円で竣工予定は26年度。提案が採用されれば世界に貢献できる。

日刊工業新聞 2023年05月12日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
国際舞台で営業をかけているのが宇宙デブリと北極海域の砕氷船、研究の在り方についてすり合わせをしているのがオープンサイエンスとセキュリティ、インテグリティになります。いまさらオープンサイエンスはどうなのか、特にオープンアクセスは各国さんざん揉めて現在があるのに、日本が働きかけても動かないのではないかと思っておりました。ですが、担当官の手応えは大きいようです。例年になく具体的な記述になるから、ちゃんと見てなさいと怒られました。生成系AIのおかげなのか、始まる前よりもいいものになったようです。実際、その担当は何度も書き直していたそうです。つまり閣僚レベルでの折衝で、事務方の事前調整よりも前に進みました。蓋を開けてみるまでわからんものだなと反省する次第です。今日は午前中の会議で地球規模課題への国際協力を扱います。宇宙デブリと砕氷船の提案が実を結ぶかが焦点になります。

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