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G7広島サミット主要論点はここ…経済安保・エネルギー問題どうなる?

世界経済の混迷が深まる中、19日に先進7カ国(G7)広島サミットが開幕する。ロシアのウクライナ侵攻や中国への半導体規制で“非西側”との対立が鮮明となる一方、脱炭素では石炭火力の廃止時期をめぐり先進国間でも隔たりがある。中ロや気候変動への対応は、経済成長が見込まれるグローバルサウス(南半球を中心とする途上国)をいかにして巻き込むかも焦点となる。課題山積下で議長国日本のリーダーシップが試される。

G7広島サミットは21日まで3日間の日程で開かれ、世界経済が直面する問題について議論が交わされる。継続するロシアの軍事侵攻に対しては、追加制裁を含めウクライナ支援の徹底で結束を固めると見込まれる。

一方、利害が錯綜(さくそう)する課題は多い。半導体など先端技術の窃取が問題視される中国に対し、米国では制裁強化論が強まるが、世界のサプライチェーン(供給網)はなお中国に頼る。「日本が中国を完全に切り離すことは難しく、(外圧を強めれば)中国からの報復措置も考えられる」(日本総合研究所の野木森稔主任研究員)ため、対中戦略は硬軟両方で経済安全保障上のリスクを伴う。

脱炭素では日欧間でも隔たりがある。4月のG7気候・エネルギー・環境相会合の声明では、天然ガスを含め温室効果ガス(GHG)の排出削減対策のない化石燃料を段階的に廃止するとしたが、欧州が求めたとされる石炭火力の廃止時期の明記を見送った。

企業では「再生可能エネルギーや水素など新燃料主体の絵姿と、橋渡しとなる天然ガスの両方が重要」(三井物産の堀健一社長)と脱炭素への移行期の取り組みが進むが、資源や隣国との電力融通機能を欠く日本は石炭を当面排除できない。

中ロへの制裁や気候変動対策の実効性確保にはグローバルサウスとの連携が欠かせないが、一筋縄ではいかない。中ロがアジアやアフリカ諸国などに経済支援で接近して“第3極”の取り込みを狙っているほか、厳しい環境規制は新興国を西側陣営や脱炭素化から遠ざけかねない。

台湾侵攻リスクなどがある中国の一段の態度硬化も懸念される。丸紅執行役員経済研究所長の今村卓氏は「G7は新興国に対しインフラ整備で中国の(巨大経済圏構想である)一帯一路以外にも選択肢があることを示しつつ、これは中国を封じ込める措置ではないことを伴った声明などにする必要がある」と指摘する。

米銀行の連鎖破綻に伴う金融不安への対処は喫緊の課題だ。高インフレ抑制に向けた急激な利上げの副作用が市場の動揺を誘発しており、金融危機回避のため銀行監督の強化など主要国間の協調が急務となっている。

G7の議論の行方が日本企業に及ぼす影響も大きい。中国への先端技術の流出には制裁の徹底を要するが、急激に緊張が高まれば中国に依存する供給網分断リスクが一気に顕在化しかねない。

中ロとグローバルサウスによる強固な陣営が形成されれば、世界経済のブロック化が進み、海外事業や資源調達に支障が生じる恐れもある。利害が複雑に絡み合うG7サミットで日本の調整力が問われる。(編集委員・田中明夫)

日刊工業新聞 2023年05月10日

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