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ナイロン供給網に打撃…韓国のカプロがCPL生産停止

ナイロン供給網に打撃…韓国のカプロがCPL生産停止

CPLプラントが立地する石油化学コンビナート(韓国・蔚山広域市)

韓国・カプロはナイロン原料のカプロラクタム(CPL)生産を6月末まで停止することを決めた。同社は同国内で唯一、CPLプラントを持つ。在庫調整局面下で、約3カ月にわたって設備を停止するのは「異例の事態」(素材大手幹部)。自動車産業や繊維産業が根付く韓国では、需要先のナイロンメーカーが複数操業する。各社の在庫能力は限られることから、材料調達への影響が懸念される。

休止設備を除くカプロの生産能力は推定年21万トン。韓国生産の大半を担い、輸出も手がける。自動車生産の回復の遅れや衣料用繊維の不振でナイロン需要が軟調なほか、中国産品の台頭などでCPLの市況は低迷している。原料・コスト高を転嫁しきれず、カプロは2022年12月期の営業損失が1223億ウォン(約122億円)、(21年12月期は360万ウォンの黒字)の赤字に転落した。

自動車産業ではタイヤコードや樹脂製部品などで幅広くナイロンが使用される。現地には財閥系化学メーカーや繊維メーカーによる年産数万トン級のナイロン生産設備が複数操業している。CPL供給が停止すればサプライチェーン(供給網)への影響は避けられず、「固体状の輸入品で代替する場合、精製コストが余計にかかるため川下の競争力低下につながる」(同)。

CPLは中国の新増設などで需給緩和が進み、アジア市場に変化をもたらしつつある。国内に原料を含むナイロン供給網を形成してきた日韓の素材産業はこうした構造変化に揺れている。

日本は国内需要を超えるCPL生産能力を有し、21年は生産量の4割超が輸出された。ただ足元では国内化学メーカーは、CPL事業の再編に乗り出している。

住友化学は22年10月に愛媛工場(愛媛県新居浜市)の年8万5000トンの生産設備を停止。さらに、UBEは24年度をめどに国内生産を大幅縮小する方針を示している。

ここ10年で中国企業を中心とする新増設が相次ぎ今後も計画されていることから、海外市場はさらなる競争激化が見込まれている。また、CPLは生産時のエネルギー負荷が高く、将来的に脱炭素化への投資が必要になる。事業環境が変化する中、川下産業の需要動向やカーボンニュートラル温室効果ガス排出量実質ゼロ)のバランスを取りながら、製品供給の最適化をどう図っていくか。石化産業全体にも共通する課題に、CPL事業は直面している。

日刊工業新聞 2023年04月27日

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